Monthly Prog Notes -November-
晩秋から初冬に差し掛かりつつある11月終盤の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
今回はマルチプレイヤー主導によるシンフォニック・プロジェクトスタイル始め、キーボードメインのテクニカル・プログレッシヴの新鋭、果ては再復活バンドの待望の新譜…といった多岐に亘るバリエーションに富んだ好ラインナップとなっております。
今やかのカルファゲンを筆頭に極上なるシンフォニック・ロックを多数輩出し、改めて新世代プログレッシヴ・メインストリームへと急成長した感すら伺わせるウクライナより、3年前に突如彗星の如く登場し、そのあまりにハイクオリティーな完成度のデヴュー作で一躍注目を集め、21世紀プログレッシヴ・シーンに颯爽と躍り出た“モダン・ロック・アンサンブル”が、満を持して遂に待望の2作目をリリースとなりました。
前デヴュー作を遥かに凌駕し変幻自在に展開する夢幻のシンフォニックワールドは、世代と時代を超越し全てのプログレッシヴ・リスナーにアピール出来る文句無しに必聴の最高傑作となっています。
久々のドイツから、かねてから大きな話題と注視を集めSFFやシュテルン・コンボ・マイセンばりのテクニカルキーボードワークを縦横無尽に繰り広げる期待の新鋭“ボイジャー・フォー”堂々たる鮮烈のデヴュー作がお目見えとなりました。
ジャーマン・プログレッシヴを踏襲したエッセンスに、EL&Pやクリムゾンから影響を受けたイディオムが融合した唯一無比の音世界に感嘆する事必至です。
復活再結成ブリティッシュ・バンドとして一躍21世紀プログレッシヴ・シーンへと返り咲いた“ブラム・ストーカー”が、5年振りの通算3作目となる新譜を引っ提げて再び私達の前に帰って来ました。
バンドネーミングのイメージと相まった…ややもすればHM/HR風なアートワークながらも往年のブリティッシュ・ロックの伝統と王道を保持したキーボードワークは、聴き手の誰しもが目頭を熱くし溜飲の下がる思いに捉われる事でしょう。
過ぎ去りし晩秋の思いを乗せ朧気な月夜の寒空の下、抒情と激情の狭間で謳い奏で鼓舞する眩惑の楽師達の終わり無き饗宴に、暫しの間でも触れて頂けたら幸いです…。
1.MODERN-ROCK ENSEMBLE
/Night Dreams & Wishes
(from UKRAINE)


1.Intro/2.Overture/3.Night Comes. Dreams/
4.Barocco Scherzo/5.Childhood & School Days/6.Insomnia/
7.Dark Kingdom & The Evil King Part 1/
8.Dark Kingdom & The Evil King Part 2/
9.Dark Kingdom & The Evil King Part 3/
10.Wake Up/11.Final / Outro
2016年突如彗星の如く登場し、そのあまりに傑出したハイクオリティーな完成度のセンセーショナルなデヴュー作『Touch The Mystery』で、一躍世界中のプログレッシヴ・リスナー及びシンフォニック・ファンから絶大なる称賛を受けた、カルファゲンと並ぶ21世紀ウクライナ・シンフォニックの雄になったと言っても過言では無いモダン・ロック・アンサンブル。
本作品は名実共に世界中のファンの期待を一身に背負い、3年ぶりに満を持してのリリースとなった待望の2ndであり、あの衝撃のデヴュー作をも遥かに上回り更なる格段の飛躍を遂げたであろう…アートワーク総じてシンフォニック始めジャズロック、ヒーリングミュージック、ネオ・プログレッシヴ…etc、etcを内包した音楽性が綴れ織りの如く駆け巡り、決して一筋縄ではいかない変幻自在にしてエモーショナルな極上のシンフォニックワールドを繰り広げており、トータル70分強という長尺ながらもあっという間に時が経つのを忘れさせる位にスリリングで飽きを感じさせない。
混声コーラスにストリング・アンサンブル、ブラスセクションを配し、概ね10人近い大所帯のメンバーによる完全無欠で寸分の隙をも与えない重厚にして時折ライトな現代感覚をも織り交ぜ、ウクライナというエキゾチックさに加味してイエスやEL&P影響下が要所々々で垣間見られ、もはやこれを聴かずして2019年のプログレッシヴは語れないと言っても決して言い過ぎではあるまい。
本作品を通して改めて思うに、プログレッシヴ=シンフォニック・ロックを創るというのはこういう事なんだと声を大にして言いたくなるくらい胸が熱くなるのである。
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2.VOYAGER IV/Pictures At An Exhibition
(from GERMANY)


1.Promnade/2.Samuel Goldenberg & Schmuyle (My Point Of View)/
3.Gnomus/4.Il Vecchio Castello (Photophobia)/
5.Promenade II/6.Tuileries/7.Bydlo (The Bullock Cart)/
8.Lucky Man/9.Catacombae/Cum Mortuis In Lingua Mortua/
10.Baba Yaga/11.The Great Gates Of Kiev (Daedalus Calling)/
12.Talk To The Wind
バンドネーミングとアートワークとのイメージが相乗効果通りと言っても過言ではない、ジャーマン・プログレッシヴから久々に骨太で且つ本格派ここに登場ともいえるボイジャー・フォー堂々たるデヴュー作がお披露目となった。
アルバムタイトルから収録曲に至るまで、彼等もまた御大EL&Pからの多大なる影響下である事を物語っており、EL&Pと同様ムソルグスキーの『展覧会の絵』をベースにしつつも、決してかの御大との模倣や類似性とは一線を画した、ジャーマン・ロックらしいアイデンティティーに裏打ちされた多種多様な音楽性(クラシック始めジャズ、コンテンポラリー等)とバラエティーに富んだ彼等ならではのオリジナリティーが作品全体に反映されている。
毛色こそ違うがSFFやシュテルン・コンボ・マイセンにも近いシンパシーすら窺わせ、母国のジャズピアニスト界では過去に何度も受賞経験のあるピアニスト(エマーソン影響下の)主導による、リズムセクションとサックスも兼ねるヴォーカリストを擁した、如何にもといったユーロロック感満載の変則4人編成スタイルが実に微笑ましい限りである。
ジャズィーに謳われる「ラッキーマン」も然ることながら、アレンジと曲調の変わったクリムゾンの「風に語りて」に溜飲の下がる様な感慨深い思いに捉われると同時に、リスペクト云々といった次元すらも超越したプログレッシヴ・ロックがもたらした大いなる可能性すらも示唆した実に興味深い逸品であることに違いはあるまい。
3.BRAM STOKER/No Reflection
(from U.K)


1.Ballad Of The Bogeyman/2.Joan Of Arc/
3.Pictures Of Light And Shade/4.Otranto/
5.Gotta Get Outta Here/6.Cut Down The Corn/
7.Terminate/8.Spirit Of The Light
オリジナルメンバーのキーボーダーTony Bronsdon、そして現ESP ProjectのTony Loweと共に2014年に電撃的な復活再結成を遂げ実に42年ぶりの2作目となった『Cold Reading』をリリースし、その後の動向が大いに注目を集めていた…文字通り70'sブリティッシュ・ロックの生ける伝説となったブラム・ストーカーが、5年の沈黙を破ってTonyを中心に新たなギタリストとドラマー、そしてメインヴォーカルを兼ねる女性ベーシストを迎え、デヴュー作時代の原点回帰に立ち返ったかの如く装いも新たな4人編成のバンドとして、本作品こそ実質上の再出発となった3rdに当たる新譜である。
名は体を表すの言葉通り、バンドネーミングに相応しくドラキュラ伯爵をも彷彿とさせる肖像が描かれた、一見してゴシックメタル系の畑違いのアートワークを連想させるが、安易にプログメタルやらメロディック・シンフォに歩み寄る事無く、あくまで70年代ブリティッシュ・プログレッシヴの名残や王道と伝統をとどめた、さながらエニドやカーヴド・エアばりのクラシカル・シンフォニックへと生まれ変わり、サウンドのメリハリに加えて寄せては返す波の様に起伏の幅すらも感じさせる極上で豊潤なる大英帝国の高らかな旋律に、聴き手の心の琴線はきっと鷲掴みにされることだろう。
どうか願わくばジャケット云々に決して惑わされる事無く、騙されたつもりで心をまっさらにしてお聴き頂きたい。
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