Monthly Prog Notes -May-
5月もいよいよ終盤、風薫る初夏から日に々々本格的な夏へと季節は移り変わり、コロナウイルス禍で不穏に大きく揺れ動いた一ヶ月間…様々な不安要素こそ否めないものの、漸く全国規模で緊急事態宣言が解除され、新たなる前進と再生への一歩を歩み出したそんな感すら窺わせます。
ほんの僅かな明るい兆しの光明と背中合わせに、コロナウイルス蔓延第二波といった懸念と不安感が拭い切れない昨今ですが、こんな時こそ音楽の力を借りてでも更なる気持ちで臨み心身を引き締め、希望を胸に前向きに歩んでいかねばと願わんばかりです。
今月のラインナップは、今や21世紀イタリアン・ロックシーンに於いてラ・マスケーラ・ディ・チェラやイル・バシオ・デッラ・メデューサと並ぶベテランの域に達したと言っても過言では無いヘヴィ・シンフォの雄“ウビ・マイオール”の実に5年ぶりとなる通算4作目の新譜が到着しました。
デヴューから一貫してリリシズムとミステックな雰囲気を湛えつつ、70年代ヴィンテージ・スピリッツを踏襲したダークエナジー迸るヘヴィサウンドは今作も健在で、更なる自己深化(進化)を遂げた極上で優雅なる音空間に暫し時を忘れる事必至でしょう。
久々のドイツからは嘘偽り無しの新たなる期待の新星現る…そんなフレーズすらも寸分違わぬ、アマチュア臭さ一切皆無な弩級のニューカマー“アンセストリー・プログラム”のセンセーショナルなデヴュー作がお目見えです。
日本のSFコミック或いはジャパニメーションをも意識しつつエコロジーな視点すら垣間見える意味深なアートワークを含め、クリムゾン、GG、果てはスポックス・ビアードへのリスペクトをも予見させるヘヴィ・プログレッシヴに幾分ポスト的な雰囲気をも兼ね備えたハイブリッドさは、まさしく驚愕の新世代登場を告げる決定打と成り得るでしょう。
北欧スウェーデンからもムーン・サファリの元ドラマーを擁する要注目のニューカマー“ウインダム・エンド”堂々のデヴュー作が登場しました。
ムーン・サファリの優しくも甘美で陽のイメージすら感じさせる音楽性とは真逆な、予測出来ない展開に加え起伏と陰影を帯びたドラマティックで北欧らしいイマージュとヴィジュアルが色濃く反映されたメロディック・シンフォは、かのIQにも匹敵するマインド感で徹頭徹尾埋め尽くされ、単なる一介のポッと出なメロディック系とは一線を画した醍醐味と充実さはリスナー誰しもが至福なひと時を味わえる事でしょう。
平穏な日常と清々しい開放感が徐々に戻りつつある今日この頃、新生活スタイルの浸透に相応しい2020年夏の到来を奏でる誇り高き匠達の荘厳且つ深遠なる調べに暫しの間耳を傾けて頂けたら幸いです…。
1.UBI MAIOR/Bestie, Uomini E Dèi
(from ITALY)


1.Nero Notte/2.Misteri Di Tessaglia/
3.Wendigo/4.Nessie/5.Fabula Sirenis/
6.Bestie, Uomini E Dèi
2005年のデヴューから一貫して、バレット・ディ・ブロンゾないしビリエット・ペル・リンフェルノ…等といった70年代イタリアン・ヘヴィプログレッシヴの系譜を脈々と継承し、かのラ・マスケーラ・ディ・チェラ始めイル・バシオ・デッラ・メデューサと並ぶであろう、ヴィンテージスタイルの21世紀イタリアン・ヘヴィシンフォニックの担い手として、ベテラン格という確固たる地位を築き上げたウビ・マイオール。
2015年の3rd『Incanti Bio Meccanici』から実に5年ぶりとなる新譜4thとなるが、前作のメンバーチェンジで女性ギタリストMarcella Arganeseが加入し音楽的にも更なる幅が広がり格段の成長を遂げ、今作ではベーシストがGianmaria Giardinoに交代しリズム隊の強化を図った甲斐あってか、収録された全曲とも従来通りに大作主義の趣を留めつつもコンパクトで尚且つタイトに仕上がっており、曲毎によってリリシズムとミステリアスが同居した様々な表情と側面が垣間見られ、聴き手を飽きさせないグイグイと惹き付ける楽曲作りの上手さとその健在ぶりは嬉しくも頼もしい限りである。
ヴォーカリスト(+ヴァイオリンとトランペット)にしてフロントマンでもあるMario Moiの技量も然る事ながら、バッテリー的なポジションのキーボーダーGabriele Manziniのコンポーズ能力とスキルの高さがバンドの士気を高めていると言っても過言ではあるまい。
彼等の様な個性と存在あってこそ今日の21世紀イタリアン・ロックは支えられているのだろう。
世界的なコロナウイルス禍の暗澹たる昨今ではあるが、改めて今年も彼等の様な素晴らしき良い作品に巡り会えて幸せである。
Facebook Ubi Maior
2.THE ANCESTRY PROGRAM/Tomorrow
(from GERMANY)


1.Silver Intro/2.Silver Laughter/3.Pun Intended/
4.Another Way To Fly/5.Easy For Us/6.Tomorrow/
7.More To This/8.Tangerine Parties/9.Human Key/
10.No Chorus No Home/11.Ship To Shore
限定版デジブックCDを引っ提げて、2020年華々しくも力強いデヴュー作を飾ったジャーマン・プログレッシヴ期待の新星THE ANCESTRY PROGRAM=通称TAPことアンセストリー・プログラム。
バンドのネーミングも然る事ながら、『ブレード・ランナー』或いは『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』を意識したかの様なコンセプトに、エコロジカルな視点とSFジャパニメーションなヴィジュアルに満ち溢れた何とも実に意味深なアートワークに目を奪われてしまうのは決して私だけではあるまい。
豪華絢爛なジャケットのイメージに寸分違わぬ、ポストロック風な浮遊感とイマジネーションに加え、クリムゾン始めGG、果てはスポックス・ビアードから多大なる影響を受けたであろう変拍子全開で息つく暇すらも与えないくらい複雑且つ緻密に展開されるテクニカル・ヘヴィシンフォなアンサンブルの応酬が存分に堪能出来る事だろう。
メインヴォーカリスト始めギター、ベース、ドラムスの4人編成でヴォーカリストを除くメンバー3人がキーボードを兼ねるといった変則的なスタイルながらも、メインもサブの楽器パートどれ一つ取っても完全無欠で少しもクオリティーが落ちる事無く、70年代イズムを踏襲したハモンドとシンセの効果的な使い方が良い意味でドイツ的(プログレッシヴとハードロック両方面を内包した)なのも実に微笑ましい限りである。
もはやメロディック・ロックもネオ・プログレッシヴといった次元すらも超越した、ここにあるのは70年代イズムと21世紀イズムとのせめぎ合いが織り成す、唯一無比なる重厚でハイブリッドな音空間のみである。
Facebook The Ancestry Program
3.WINDOM END/Perspective Views
(from SWEDEN)


1.The Dream/2.Starless Sky/3.Walk This Way/
4.Within The Shadow/5.Revolution/6.Ghosts Of The Past
バンド結成以降…紆余曲折と試行錯誤を経て元ムーンサファリのドラマーを迎え、今年2020年に漸くめでたくデヴューを飾る事となった、北欧スウェーデンより要注目のニューカマーとして各方面から期待の注視を集めているウィンダム・エンド。
ややもすればプロパガンダなタッチを思わせるジャンル畑違いなアートワークに些か躊躇してしまいそうにもなるが、そんな意匠云々の下世話な心配を他所に、21世紀プログレッシヴ・スタイルを地で行く正統派のメロディック系シンフォニックを創作しており、北欧らしい雄大なイマージュとエモーショナルさを兼ね備えた泣きの旋律からは、かのマリリオンやIQにも匹敵し追随するくらいのドラマティック&キャッチーなメロディーラインに加え鮮烈なまでのサウンドアプローチが要所々々で窺い知れて、同国のフラワーキングスやムーンサファリとはまたひと味違った意味でワールドワイドな視野を見据えた野心作に成り得ると言っても言い過ぎではあるまい…。
ワールドワイド規模のデヴューリリースに先駆け、日本盤のみ特典ボーナスディスク付の紙ジャケット仕様限定2枚組CDが先行リリースされ、本作品に収録された全曲も然る事ながら特典ボーナスディスクに収録された3曲の素晴らしさは落涙必至である。
良い意味で70年代のヴィンテージカラーとスタイルを継承したシンフォニック系が主流の21世紀スウェーデンのシーンに於いて、程良いポップスフィーリングに優美で陽のイメージが強いムーンサファリとは真逆な、時代相応に陰影を帯びた曲調、起伏とメリハリ感ある予測出来ないサウンド展開を紡ぐ彼等の真摯で妥協無き姿勢に、新たな次世代プログレッシヴの端緒に似通った感覚すら見い出せる様な思いである。
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