Monthly Prog Notes -October-
10月終盤の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
2020年コロナ禍真っ只中の秋本番、思えば今年も残すところあと2ヶ月近くとなりました。
燃える様な紅葉から落葉の晩秋へと、日に々々肌寒さが感じられる様になって気持ち的にも寂寥感をも覚えつつ、いつの間にか初冬への足音すら聞かれる様になって、改めて月日の移り変わりの早さに感慨深い思いに捉われます…。
今回はそんな2020年の晩秋を飾るに相応しい、燻し銀の如き鈍い光沢を放つ…ある意味一筋縄ではいかない鮮烈且つ孤高の個性が際立っている曲者的な3アーティストによるラインナップが出揃いました。
少数精鋭ながらも超個性派プログレッシヴを世に輩出してきたスイスのシーンから、もはやベテランクラスの頂に君臨していると言っても過言では無い“シシフォス”の4年ぶり通算5作目に当たる新譜は、GGやクリムゾンに触発されたであろう彼等従来の持ち味である70年代イズムのヴィンテージカラーが色濃く反映された、ダークでヘヴィなプログレッシヴが更に突出(傑出)した決定版といえる白眉の出来栄えとなってます。
21世紀アメリカン・プログレッシヴから、2015年のデヴューから実に5年ぶりの新譜2ndをリリースした“ジオ”も要注目株です。
サイバーパンクなシチュエーションとSF的なモチーフにジェネシス影響下のシンフォニックが違和感無くコンバインしたデヴュー作のインパクトも然る事ながら、今作でのバンクシー風なアートワークから連想させるアーティスティック+アイロニカルに加えて、モダンでタイトなアメリカン・シンフォニックの真骨頂が垣間見える秀逸さを御堪能下さい。
イタリアからはブリティッシュ・カンタベリーから多大なる影響を受けたであろう超個性派ニューカマー“インスタント・カーテン”のデヴュー作が聴き処満載です。
イタリアンな香りや佇まいこそ稀薄ではあるものの、ハットフィールズ&ザ・ノースやマッチング・モールといったカンタベリーの王道をリスペクトし、21世紀バンドらしくポスト的な趣をも加味した、かつてのピッキオ・ダル・ポッツオや昨今のホムンクルス・レスとはひと味もふた味も違う彼等ならではの唯一無比の音世界観に、イタリアン次世代の新たなる可能性と方向性を示唆する会心の一枚となる事請け合いです。
抒情的でどこかしら去りゆく季節の寂しさにも似通った3枚の楽章に、物憂げな思いを馳せながら暫し現実から遊離して、晩秋のセンチメンタリズムとロマンティシズムに思う存分浸って頂けたら幸いです…。
1.SISYPHOS/Ocean Of Time
(from SWITZERLAND)


1.Ocean Of Time/2.Jogging For The Brain/
3.Home?/4.Trying To Be Brave/
5.A Rebel Is Not The Devil/6.The Uncertain/
7.Keep Talking/8.Black And White
81年にパンク・ニューウェイヴ系バンドとしてデヴューを飾り、後々に於いて時代相応の様々なサウンドスタイルへと変遷を辿り、1997年に漸くプログレッシヴにシフトして以降、牛歩的ながらも独自のペースで創作活動を継続し、今やスイスのシーンきってのベテラン格へと辿り着いた感のシシフォス。
本作品は2020年リリースのプログレッシヴにシフトした通算5作目に当たる4年ぶりの新譜で、遡れば1997年かのアイランドやサーカスにも匹敵する驚異的な演奏技量と完成度を誇る『Moments』以降、GG始めクリムゾン、VDGGを崇拝しつつも楽曲にちりばめられた、どこか斜に構えたニヒリズムというかシニカルな韻をも踏んだ独創的なサウンドスタイルは今作も健在で、単なる一介のヴィンテージ系プログレッシヴに括り切れない凄みと貫禄すらも彷彿とさせる。
鉄壁不動の4人のメンバーに加えてヴァイオリンやヴィオラ、アコギのゲストを迎え、妖しくも陰影を帯びたダークでヘヴィなオルガンにメロトロン、アグレッシヴでエモーショナルな深く沈み込む様なギターワークとリズム隊、ハミルを意識したかの様なヴォーカルが織り成す、時にブルーズィーなヘヴィロック風に歩み寄ったかと思いきや乗りの良いロックンロール調に転じたりと、プログレッシヴを下地に変幻自在で八面六臂の如き側面をも垣間見せる、良い意味で掴み処の無い完全無欠な秀逸さを物語っており、まさしく齧り聴き厳禁の傑作と言えよう。
ピアノをバックに切々と謳うラストパートは落涙必至で欧州の美意識とロマンティシズムを禁じ得ない…。
余談ながらも彼等が所属しているMoonrecordsのみでしか公式サイトが無く、主流のSNSやYouTubeすらも一切公開していない辺り、如何にも彼等らしい頑固一徹な意固地さを感じてならない(苦笑)。
Sisyphos Official website
2.THEO/Figureheads
(from U.S.A)


1.Pathology/2.Man Of Action/
3.The Garden/4.Portents & Providence
かのバンクシーの壁画をも連想させる、何とも実に意味深なアートワークが印象的な21世紀アメリカン・シンフォニック期待の要注目株ジオの、今作は5年ぶりの新譜2ndである。
2015年のサイバーパンク風なSFテイスト感満載な意匠に加え、中期ジェネシス系シンフォニックとの見事なコンバインのデヴュー作に鮮烈且つ斬新なる衝撃を受けたが、今回は前作から一転してアーティスティックでアイロニカルな雰囲気とカラーを湛えた、長尺4曲の構成による意欲に満ちた野心作に仕上がっている。
ジャズ畑からポップス、プログレッシヴとジャンルの垣根を越えた多岐に亘る活動と併行してバンドのイニシアティヴを担うキーボード兼ヴォーカリストのJim Alfredsonを筆頭にリズム隊とギターによる基本的な4人編成(但しギタリストが曲によって交代していることから、バンドはキーボードトリオ+ギターであると思って差し支えあるまい)で、アメリカンなヴィジュアルとアイデンティティーに裏打ちされた、ジェネシス影響下の重厚でリリシズムが溢れつつも時代相応のモダンでタイトなシンフォニックが縦横無尽に繰り広げられており、ややもすればアートのイメージからして陰鬱な向きの曲想に思われがちであるが、そこはやはり曲作りの上手さが功を奏して力強く開放的で北米の大らかな空気感とハートウォーミングな佇まいが滲み出ており、他のポッと出のジェネシス影響下のバンドとは一線を画した、長年のベテランらしいキャリアとプライドが眩く光っている好作品であると言っても過言ではあるまい。
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3.INSTANT CURTAIN/Let Tear Us Apart
(from ITALY)


1.Reverse In The Sand/2.Tell The Tales, May I…/
3.The Biginning/4.All White/5.And The Ship Battle Down/
6.The Rest Divide Us/7.Safe As The World/8.Stay/
9.April
21世紀イタリアン・ロックシーンからメロディック系シンフォとは無縁な形で、久々にワールドワイドな視野をも見据えたであろう期待の新星インスタント・カーテンのデヴュー作がここにお目見えとなった。
ややレコメン系を匂わせる様なアートワーク始め英詞のヴォーカルとサウンドスタイル、そのバンドネーミング総じて、イタリアン・ロック独特な香りや雰囲気が稀薄で、些かダイナミズムに欠ける物足りなさこそ否めないが、それらを補っても余りある位にニューカマーらしからぬ独特の音楽性の素晴らしさは折り紙付きであるといえよう。
英国のハットフィールズ&ザ・ノースやマッチング・モールといったカンタベリー系に感化され、果ては王道のジェネシスから多大なる影響を受けた、そのブリティッシュナイズで21世紀ポストの持つクールな感触と風合いですらスタイリッシュに聴かせる演奏技量とコンポーズ能力には舌を巻く思いで、改めて次世代イタリアン・ロックの持つ大いなる可能性を示唆する意味で重要な一枚と成り得るであろう。
キーボード、パーカッションを兼ねるベーシストに、ドラマー、専任ヴォーカリスト、そしてハモンド、メロトロン、フェンダーローズ、シンセをもマルチに弾きこなすギタリストの変則4人編成が織り成す、同じくカンタベリーの洗礼を受けたかつてのピッキオ・ダル・ポッツオないし昨今のホムンクルス・レスとはひと味もふた味も異なったサウンドスカルプチュアに、いつしか彼等の術中に嵌まって時が経つのも忘れてしまう魅力満載で曲者感が半端では無い、硬派ながらも良い意味で捻くれ度合いが突出した愛すべき一枚であると断言出来よう。
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