Monthly Prog Notes -November-
11月終盤を迎え日に々々初冬の訪れが感じられる様になった昨今、皆様如何お過ごしでしょうか…。
コロナ禍が一向に衰える事の無い晩秋真っ只中でお送りする「Monthly Prog Notes」、今回はそんな暗雲垂れ込めるコロナ禍に抗うかの如く、真っ向正面から勝負を挑み堂々たる自らの音で苦難に立ち向かって道を切り拓いたプログレッシヴの匠達3バンドというラインナップが出揃いました。
イギリスからは80年代ブリティッシュ・ポンプロック勃発時に於いて、その一歩二歩も抜きん出た類稀なる音楽性と完成度で一躍注目を集め、今やかつてのポンプロック云々といった概念すらも遥かに超越し30年選手のキャリアを誇る“ソルスティス”が、前作から実に7年ぶりのリリースとなった通算6作目を引っ提げて再び私達の前に帰って来ました。
音楽性とアートワーク総じてあたかも原点回帰に立ち返ったかの様な、瑞々しくも優雅で牧歌的なブリティッシュな香りと佇まいが脳裏に色鮮やかに甦る最高傑作にして会心の一枚を是非御堪能下さい。
ヨーロッパ大陸はオーストリアからまた素晴らしくも嬉しい便りが届きました。
今や21世紀オーストリア・プログレッシヴの代表格に成り得たと言っても過言では無い、コンスタンスなペースで作品をリリースし続けている“ブランク・マニュスクリプト”のスタジオアルバム通算4作目が到着。
デヴュー以降から脈々と流れ続けている、フロイド始めクリムゾン、VDGG影響下のダークでヘヴィなカオス渦巻くシンフォニーも然る事ながら、如何にも意味深でアイロニカルな雰囲気漂う意匠は今作でも健在で、さながらコロナ禍に見舞われたリアルタイムに苦難な時代性をも反映したニヒリズムすら窺い知れる屈指の一枚となりました。
久々に日本のシーンからも巨匠目覚めるの言葉通り、80年代末期~90年代にかけて伝説的な名バンドとしてその名を馳せていたプロヴィデンスを率いていた、リーダー兼キーボーダーでもあり秀逸なるコンポーザー&メロディーメーカーだった塚田円氏が、プロヴィデンス終焉後の動向が大いに注視されながらも、長きに亘る沈黙を守り続け復活の時を待って満を持しての21世紀ジャパニーズ・シーンへの再浮上となった、渾身の新バンド(プロジェクト?)“那由他計画”を立ち上げたその衝撃のデヴュー作は、かつてのプロヴィデンスへのオマージュにも似たクリムゾンそしてUK影響下の愛情すらも強く感じさせる、まさに久しく忘れかけていたジャパニーズ・プログレッシヴの持ち味とでもいうべき心の高鳴りと飛翔感、或いは手に汗握る様な高揚感と興奮を伴った超絶級で必聴必至の感動作となりました。
激動と不穏の2020年も残すところあと一ヶ月余、まるで時代の今を投影しているかの様な寒々とした冬空の下で、自らの音楽世界観を紡ぎながらも絶え間無く挑戦し続ける誇り高き楽師達の魂の饗宴に暫し耳を傾けて大いに心を震わせて頂きたく思います。
1.SOLSTICE/Sia
(from U.K)


1.Shout/2.Love Is Coming/3.Long Gone/
4.Stand Up/5.Seven Dream/6.A New Day/
7.Cheyenne 2020
心洗われる作品に久々に出会えたという表現が許されるなら、まさしくこの一枚こそが相応しいと言えないだろうか…。
84年のデヴュー作『Silent Dance』に触れた時分のセンセーショナルな驚きと感動から早30年余、2020年という激動の年にリリースされたソルスティスの通算6作目(かのIQ主宰のGEPレーベル移籍という強力な後ろ盾を得た)に当たる新作は、あたかも初心に立ち返ったかの如き原点回帰をも彷彿とさせる、実に瑞々しい五感と詩情に満ち溢れたブリティッシュ然とした優雅で牧歌的な佇まいが存分に堪能出来る会心の一枚になったと言っても過言ではあるまい。
2013年の前作『Prophecy』での、一見してマーベルかDCコミックスを思わせるアメコミ風なアートワークに戸惑いというか下世話ながらも一抹の不安を覚えたものの(苦笑)、今作では打って変わってネイチャリズムが色濃く反映された美麗で味わい深い意匠に、ロジャー・ディーンを意識したかの様な字体ロゴを含め、彼等が思い描く自然との共存が内包された理想世界が一枚に凝縮された、彼等の全作品中に於いて最高の完成度を誇るであろう完全無欠で秀逸な傑作に仕上がっている。
唯一のオリジナルメンバーにしてキーボーダー兼リーダー格Andy Glassの不変で揺るぎない音楽性とコンポーズ能力含めたスキルワークの素晴らしさも然る事ながら、新加入の女性ヴォーカリストJess Hollandのリリカルで甘く切ない恋情且つ魅力的なハイトーンヴォイス、幾分イエスを意識したかの様なメロディーラインにコーラスワーク、シンフォニックでポップスなエッセンスが加味され英国フォーキーなフィーリングが一気に集約された、混迷と不穏の世に一筋の光明すら見い出せる夢見る様な贈り物となった素敵な一枚を是非貴方(貴女)のライヴラリーに加えて頂けたら幸いである。
デヴュー作の収録曲“Cheyenne”がラストナンバーでリアレンジ再録されたのも実に嬉しい限りである。
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2.BLANK MANUSKRIPT/Himmelfahrt
(from AUSTRIA)


1.Requiem/2.Dance Of The Devils/
3.The Underglow/4.Twilight Peak/
5.Celestial Spheres/6.Transition/
7.Heaven
さながら漆黒の闇夜を飛び交う鳩(或いはカラス?)といった、何ともダークで意味深でアイロニカルな雰囲気を漂わせた意匠が実に印象的な、今やオーストリアの代表格へと成り得た感すら思わせるブランク・マニュスクリプトの昨年に引き続きリリースされた通算4作目の新譜が到着した。
70年代ヴィンテージカラーを湛えたスタイルは今作でも健在で、フロイド始めクリムゾン、VDGGといったブリティッシュの猛者からの影響下に裏打ちされた、リスペクト云々といった概念すらも凌駕する暗く深く重く畳みかける様なダークトーンの狂騒さが際立ったヘヴィ・シンフォニックと相まって、アヴァンギャルド且つアンダーグラウンドでデカダンスな佇まいすら想起させる…さながら場末の小劇場の舞台空間をも彷彿とさせる作風に溜飲の下がる思いですらある。
ヨーロッパ人ならではのアイデンティティーに加えて憤怒の糾弾にも似たアジテーションな趣すらも孕んだ、彼等らしい皮肉さが込められたシニカルでブラックなアートワークのイメージがそのまま具現化された、壮麗な音楽性の中に根深く潜む毒々しさが表れた問題作と言えるだろう。
アートワークからして鳥の群れが第二次大戦下の爆撃機と十字架をも思わせる様な、映画版『ザ・ウォール』のアニメのワンシーンにも共通する重々しい歴史の悲愴感が漂っているというのは思い過ごしであろうか…。
本作はかのスウェーデンの伝説的存在ダイスの未発アーカイヴ音源『The Four Riders Of The Apocalypse』から「Death」のパートを抜粋した1~2曲目と6~7曲目がトリヴュートカヴァーされ、3~5曲目がダンテの『神曲』にインスパイアされた新曲によるコンバインで構成されている。
いずれにせよ生と死の狭間で怯え続けるコロナ禍という昨今の時代背景が浮き彫りになっている作品である事に変わりはあるまい。
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3.NAYUTAKEIKAKU (那由他計画)
/Tsumibito No Kioku (つみびとの記憶)
(from JAPAN)


1.つみびとの記憶/2.シレーヌの都/
3.クリスタルドラゴン
80年代後期の我が国日本のプログレッシヴ・シーンに於いて、突如その秀でた音楽性と高い完成度を伴って降臨し、一躍にして次世代ジャパニーズ・プログレッシヴを担う期待の旗手となった伝説的存在プロヴィデンス。
89年のデヴュー作『伝説を語りて』、そして96年の2nd『蝶湖夢楼の一夜』を経て今後の動向が大いに期待されていた矢先、惜しむらくはバンド解散(自然消滅?)という憂き目に遭いつつも、21世紀の今なお根強い人気と支持を得ながら復活再結成を待望する周囲の声があったのもまた事実である。
かねてからバンド解散以降の動向が大いに注視されていたバンドリーダー兼キーボーダーにして、名実共に類稀なる秀逸のコンポーザーでもある塚田円が、プロヴィデンス復活を望む声援に後押しされるかの如く、混迷の21世紀の世に問うべく一念発起と心機一転で結成した新たなるバンド(プロジェクトだろうか)那由他計画のセンセーショナルでアメイジングなデヴュー作が、満を持してここにお目見えとなった。
プロヴィデンス時代が色濃く甦ったかの様なキーボードワークと楽曲の素晴らしさも然る事ながら、エモーショナルでテクニカルなギターワークの巧みさと強力で堅固なガッツ溢れるリズム隊の活躍に加え、浪漫座の月本美香とアルハンブラ(マージェリッチ)の世良純子によるツインの女性ヴォーカルの見事な好演が色を添え、後期クリムゾン始めイエス、UKへの愛情とリスペクトが随所に垣間見えるサウンドワークの流れと時代相応にアップ・トゥ・デイトされた10分超の大曲揃いという、まさしくプログレッシヴ・ロックの定義と雛形が、これでもかと言わんばかりに実践された真摯で妥協無き姿勢に心から拍手を贈らねばなるまい。
月本と世良による両名の歌唱力(肉声)こそ、各メンバーの楽器と並ぶ強力なエレメントであると声を大にして断言出来る位、個人的にはかのMr.シリウスの『Barren Dream』にも匹敵する頂に成り得たと言っても過言ではあるまい。
プレッシャーをかけるつもりではないものの、神戸のアイヴォリー・タワーと並んで今から次回作が非常に楽しみなところである。
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