Monthly Prog Notes -January-
2021年、今年最初の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
新しい年を迎えてから早いもので1月も最終日を迎え、未だ収束する事の無いコロナ禍の真っ只中…創作と表現までもが規制され何かと自由を謳歌出来ない閉塞感に加えて寒々とした厳冬の昨今ですが、そんな逆境にもめげず未曾有の災厄に抗うかの如く、今月もまた新たなる希望と期待感を一身に受けた素晴らしい3作品のラインナップが出揃いました。
今回の3作品とも昨年末にかけてリリースされた次世代を担うであろうニューカマー達による揃い踏みながらも、21世紀プログレッシヴ系という範疇に於いて往年の70年代イズムを踏襲し骨太で芯の通った重厚且つ醍醐味溢れ、ハイブリッドで徹頭徹尾ヴァラエティーに富んだ出来栄えを誇っております。
イギリスからは久々にブリティッシュ・プログレッシヴの系譜と王道を地で行くヘヴィでソリッドな感触に、ヴァイオリンの悠久なる調べが筆舌し難い感動と衝撃を呼び起こす期待の新鋭“ウッド・デモンズ”のデヴューに要注目です。
カーヴド・エア始めソルスティスといったヴァイオリンをフィーチャリングしたかつての名匠に追随・匹敵する孤高の旋律とリリシズムに心奪われること必至です。
陰影と哀感を帯びたメロディック・シンフォ系を多数輩出しているポーランドのシーンから、そんな今までのイメージを覆すかの様なクリムゾン並びアネクドテンからの強い影響下を窺わせる、彗星の如く降臨した“フレン”のデヴュー作も凄まじいテンションを誇ってます。
ヴォーカルレスの4人編成ながらもメロトロンとオルガンを多用したメロディアスでヘヴィネス、アコースティックピアノが効果的に配されたジャズィーな佇まいは、ユーロ・プログレッシヴの真骨頂が垣間見える秀逸さが滲み出ています。
南米の欧州と言っても過言では無いアルゼンチンからも久々の要注目作が登場しました。
キーボードとギターを手掛けるコンポーザー兼マルチミュージシャンを核に、新旧アルゼンティーナ・プログレッシヴの名立たるプレイヤー達がこぞって集結した大所帯プロジェクト・バンド“FRK(エフ・アール・ケー)”のデヴュー作は、70年代の鬼才(奇才)ブブの系譜と流れを汲んだ作風に加え、イタリアン・ロックとレコメン系のエッセンスをも加味した情熱と知性とのせめぎ合いが絶妙な好作品に仕上がってます。
窓から眺める白雪舞い散る冬空に浪漫と抒情を重ねつつ、憧れの遠き春の訪れに思いを馳せながら、暫し時を忘れ現実から遊離して音の迷宮の饗宴にその身を委ねて頂けたら幸いです…。
1.THE WOOD DEMONS/Angels Of Peckham Rye
(from U.K)


1.Arithmomania/2.The Ode Particle/
3.Big Game Fishing/4.Starstruck/
5.Interminable Beige Thing/6.Angels Of Peckham Rye/
7.All Heaven's Breaking Loose
かねてから現地イギリスに於いて、数ある21世紀プログレッシヴ・バンドの中でも大いなる話題と高評価を得ていた期待の新星ウッド・デモンズ。
本作品は昨年末にリリースされた満を持してのデヴュー作で、かつてのカーヴド・エア或いはソルスティスといったヴァイオリンをフィーチャリングした劇的で荘厳な佇まい・作風を脈々と継承し、キャメルばりの甘美なメロディーラインにムーディーズをも彷彿とさせるコーラスワーク、初期のパラス風な意表を突いた4曲目といい、正真正銘紛れも無くブリティッシュ・スピリッツ全開に際立った大英帝国の持つ朧気で幽玄な霧の如きイマジネーションが存分に堪能出来て、抽象的で意味深なアートワークながらもイメージ通りの期待感に違わぬ最高の仕上がりを誇っている。
女性ヴァイオリニストを擁する基本的な5人編成ながらも、サックス奏者含む若干名のゲストを迎えて製作された正統派ブリティッシュ・シンフォニックの王道と底力が要所々々で垣間見えて、ポッと出のニューカマーとは一線を画した一朝一夕では為し得ないスキルとコンポーズ能力・演奏水準の高さを物語るサウンドワークの巧みさ、メロトロン含むキーボードワーク然り、兎にも角にもヴァイオリンの素晴らしさには脱帽することしきりである。
もう少し到着が早ければ、彼等も間違いなく昨年のプログレッシヴ・アワード最優秀新人賞に推挙出来た事だろう。
コロナ禍収束の暁には、かのソルスティスと間違いなくジョイントツアー出来る日もそう遠くない様な気がする。
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2.FREN/Where Do You Want Ghosts To Reside
(from POLAND)


1.Twin Peaks/2.Surge/
3.Gorqca Linia/4.Pleonasm/
5.Heavy Matter/6.Time To Take Stones Away
もう如何にもといった感のアートワークを拝見しただけで、是が非でも期待感が高まる…そんな感情の高揚を促す様なアブストラクトの意匠がそのままサウンドに転化されたと言っても過言では無い、昨年めでたくセルフリリースによるデヴューを飾ったポーランド発注目の新鋭フレン。
数年前のポーランド勢は(ある種の国民性だからか)ややもすれば物悲しさと陰影を帯びたメロディック・シンフォが主流を占めている感が無きにしも非ずではあったが、近年は少しづつ外側に目を向けた開放感を伴ったシンフォニックもポツポツと散見される要になり、昨年のジェネシス系フォロワー最右翼ロマン・オディオジェイといった顕著な好例然り、彼等フレンも21世紀プログレッシヴ系スタイリッシュさとポーランドらしいカラーを纏いつつも、決して陰に籠もることなく内面から発露されるクリムゾンとアネクドテン影響下のヘヴィ&エネルギッシュで、時としてクラシカルでジャズィーなアプローチすらも窺い知れる、まさしく正統派ユーロロックが持つダイナミズムとクールさが隣り合った70年代イズムなヴィンテージ感と21世紀バンドらしい語法を双方に兼ね備えたハイブリッドさが彼等ならではの身上(信条)と言えよう。
ギター、キーボード、ベース、ドラムスというヴォーカルレスの基本的な4人編成(ポーランドとウクライナの両国籍メンバーによる混成)による全編オールインストで、特にキーボーダーが奏でる大々的なメロトロンの活躍にクラシカルなピアノタッチの好演が素晴らしい。
ポーランドのシーンも将来的にはもっと面白くなっていきそうな気配がする。
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3.FRK/El Gremio De Los Satisfechos
(from ARGENTINA)


1.A Través De La Arboleda = Parte I/Cystaio/
2.El Gremio De Los Satisfechos/3.A Través De La Arboleda = Parte II/
4.Frkland/5.Valentine/6.Chinatawn/7.Tramonto Sul Mare/
8.Montaña Rusa/9.Nowhere/10.A Través De La Arboleda = Parte III/
11.Mental Torture - El Aqua Organizadora/12.Sammy/13.Sometimes/
14.To Beat Or Not To Beat/15.Save Muy Bone/16.Amanece/
17.Zmba/18.Tramonto II/19.Vaekemandt
南米らしい陽気で楽しい…しかしながらもどこか狂気を孕んで毒気じみた、些か人を喰った様な面白愉快でダークなユーモアすら漂っている意匠に包まれて、昨年栄えある本デヴュー作を飾ったアルゼンチンの音楽創造集団と言っても過言ではあるまいFRK(エフ・アール・ケー)には、いやはや本文を綴っている私自身ですらも正直驚かされた(苦笑)。
70年代アルゼンチンきっての異彩を放つ鬼才なる音楽集団ブブにも匹敵するであろう、何とも形容し難い…捉え処が無い唯一無比な音空間に加えて、イタリアン・ロックにも相通ずるシンフォニックでクラシカルでチェンバーなカラーもあれば、かのピッキオ・ダル・ポッツォをも想起させるカンタベリーでジャズィーな世界観、果てはレコメンでアヴァンギャルドな表層すらも垣間見える、徹頭徹尾変幻自在で縦横無尽、もっと大雑把に言ってしまえば自由気ままで心底音楽を創る事に長けた楽しみをも知り尽くしたインテリジェントで幾何学的な“遊び”の精神をも謳歌しているに他ならない。
バンド(?)の中心人物でもありコンポーザー兼キーボーダーそしてギターも手掛けるマルチプレイヤーEnrico Rocca主導の許、かのブブのヴァイオリニストの助力を得て、ギターにリズム隊、女性ヴォーカリスト、サックス…etc、etc総勢19名もの名うてのアーティストが集結した奇跡で混沌とした屈指の傑作でもあり、世界中の老若男女の世代を問わないプログレッシャーの皆様に捧げたくなる様な夢想と迷宮にも似た必聴必至の一枚であることを断言したい。
この手の音楽に好みの差異はあれど、どうか是非とも一度騙されたつもりで触れて頂けたら嬉しい限りである。
何度も言うが、いやはや兎にも角にも凄過ぎる…!
FRK Bandcamp
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