Monthly Prog Notes -September-
9月も終盤に差し掛かり、日に々々本格的な秋の気配が色濃く感じられる様になりました。
芸術の秋にしてプログレッシヴの秋到来を告げるに相応しく、今回も強力なラインナップ3バンドが出揃いました。
昨年初夏に鳴り物入りでセンセーショナルなデヴューを飾った、バンドネーミングの文字通りイエス・ファミリーツリー系列に属する“フラジャイル”が、大好評だった前デヴュー作の声援とラヴコールに応えて、再び私達の前に帰って来ました。
前作を遥かに上回るハイクオリティーな完成度と緻密で繊細な構築美に加えて、70年代黄金期のイエスさながらに堪能出来る感動と高揚感は、イエス並びサーカのファンですらも魅了する事…まさしく必聴必至の最高作であると断言出来ます。
久々のブラジルからは3年越しの日本初上陸ながらも、70年代全盛期のイエス、ジェネシス、フロイド、PFM、果ては母国の大御所オ・テルソばりのヴィンテージ・プログレッシヴから多大なる影響を受けた、現代(いま)を生きる伝承者に相応しい“マキーナ・ヴェーパー”の2ndが到着しました。
これでもかと言わんばかりな70年代スタイルの王道復古と温故知新を絵に描いた様な、迷いの無い威風堂々たる真摯な創作精神に、聴き手側も溜飲の下がる思いに捉われる事でしょう。
ブラジルに次いで同じ南米のアルゼンチンからも久々に期待の新星登場を告げる“ワン”初出にして待望のCD化デヴュー作が届きました。
類稀なるマルチプレイヤー兼コンポーザーを務める、まだ20代の若き才能ONEことMariano Sebastian Rodriguezのソロプロジェクトで、当初は2017年自身のウェヴサイトからのダウンロードオンリーのデヴューながらも、2021年満を持してバンドスタイルへと移行しCD化へと英断したその自信作は、近年のハケット或いはドリーム・シアターから触発されながらも、ダーク&ヘヴィでエキゾチックな側面とが隣り合ったオリジナリティー溢れる、荘厳と混沌のハイブリッドが織り成す瞬きと齧り聴き厳禁な野心的な意欲作に仕上がってます。
未だコロナ禍真っ只中ながらも…抒情的な秋の夜長のヴィジュアルと相まって、プログレッシヴな姿勢と精神は決して挫けないの言葉通り、凛々とした巌の心の楽師達が謳い奏でる渾身の饗宴に暫し時を忘れて思い切り感動で咽び泣いて頂けたらと思います…。
1.FRAGILE/Beyond
(from U.K)


1.Beyond
a)Sent Through The Morning/b)Sharkflight/
c)Dawn/d)The Other Side/e)Flight
2.Yours And Mine
a)Like There's No Tomorrow/b)Diorama
3.The Golden Ring Of Time
昨年鳴り物入りでイエス・ファミリーツリーの流れを汲んだであろう、事実上衝撃的デヴューを飾ったフラジャイルが、世界中のイエスファン並びリスナーの称賛とラヴコールに応えて、満を持して再び私達の前に帰ってきた。
前デヴュー作同様、今作もロジャー・ディーンを意識したかの様な美麗なアートワークに加えて、名作『危機』や賛否両論呼んだ『リレイヤー』ばりに展開される大作主義3曲が目白押しで、本家イエスに追随するコーラスワーク、重厚なキーボードワークにハウを意識したギター奏法と、もはやそこにアンダーソンが加われば完全にイエスと錯覚する位、リスペクトやオマージュ云々レベルをも超越した徹頭徹尾イエス愛に満ち溢れんばかりの、文字通りハイレベルで完全無欠な完成度を誇っていると言っても異論はあるまい。
イエスファミリーと長年親交あるClaire Hamillの清廉でハイトーンクリアな瑞々しい歌唱力も然る事ながら、キーボードからベースにギターとマルチに手掛けるバンドの中心人物Max Huntのコンポーズ能力と高いスキルの素晴らしい仕事っぷりも見過ごせない。
要所々々で散見出来るルネッサンスないしソルスティスにも相通ずる繊細さとセンシュアルな佇まいに、改めて自らの襟を正したくなる位、言わずもがなブリティッシュ・ロック伝統の奥深さと高潔な気品すら禁じ得ない。
本家イエスの停滞が揶揄されてはいるものの、サーカないしフラジャイルの躍進はイエスミュージックが不変不滅である事を如実に物語っている様で、何だかとても勇気付けられるそんな思いですらある。
Facebook Fragile
2.MÁQUINA VAPOR/A Direçao Dos Bons Ventos
(from BRAZIL)


1.Caminhos De Pedra/2.Sobre Todas As Coisas/
3.Dança Da Luz/4.O Navegador/5.Luz Que Se Ouve/
6.Estrada De Sal/7.Quiástica/8.Ouro E Pó/
9.A Direção Dos Bons Ventos/10.Solitude
21世紀ブラジリアン・プログレッシヴシーンより久々に骨太で本格派の新鋭が世に躍り出たと言っても過言では無い…そんな大いなる期待感を抱かせるマキーナ・ヴェーパー2018年の現時点で最新作に当たる2作目が、3年越しながらも初上陸を果たす事となった。
今回の初お目見え以前、2010年のデヴュー作共々全くと言っていい位 (失礼ながらも) その存在が知られる事なくほぼ無名に近い存在ながらも、ほぼ同時期に到着したデヴュー作と並んで紛れも無くイエス、ジェネシス、フロイド、PFM、果ては自国の大御所オ・テルソ影響下を窺わせるであろう70年代ヴィンテージテイスト満載の、決して近年の無国籍風メロディック・シンフォに寄りかかる事の無い、皆が思い描くポルトガル語でしっかりと歌われるブラジリアン・プログレッシヴ理想的な雛形であると声を大にして言えよう。
ヴィンテージ・ハモンドの響鳴に加えて、かのFravio Venturiniばりに奏でられる70年代スタイルのギター、時にリリカルでメロディアス、ムーディーでメロウなサウンドワークとメロディーラインと相まって、ハートフルでラテンパッション溢れるヴォーカルの絶妙なバランスといい…ヒプノシス風で意味深なアートワークのイメージ通り、全てに於いて無駄な捨て曲一切無しのロックスピリッツたる真髄が心置きなく存分に堪能出来る事だろう (個人的ながらもモロにフロイドを意識した4曲目を推しておきたい)。
近年の同国のブルー・マンモスや期待の新星ストラトス・ルナと肩を並べるであろう、彼等もまた21世紀ブラジルのシーンの堅実なる担い手になってくれる事を切に願わんばかりである。
Facebook Máqina Vapor
3.ONE/Change
(from ARGENTINA)


1.Universal Symphony/2.Sonic Pulse/3.Music Box/
4.Flying Through Future Lives/5.Kato Mountain/
6.The Seed Of Life/7.Flower Song/8.Mantra/
9.Far Beyond Mystery/10.Ancestral Trip
前出のマキーナ・ヴェーパーに負けじとばかり、ブラジルと並んで南米プログレッシヴの片翼を担うアルゼンチンより驚愕にして弩級な強力ニューカマーが遂に満を持して御登場と相成った。
まだ20代の若き未知数の大器と言わんばかりなキーボーダーでアーティストネーム“ONE”ことMariano Sebastian Rodriguezのソロプロジェクトとしてスタートしたワンであるが、2017年に彼自身のウェブサイトによるダウンロードオンリーのデヴュー作が、2021年バンドスタイルという体裁にシフトして漸くCD化に繋がった次第であるが、そのハイクオリティーで怒涛の如き一大抒情詩をも想起させる完成度たるや、とても一朝一夕で成し得ないであろうレベルクラスに加えて、Mariano自身の秀でたコンポーズ能力並び音楽性スキルの高さが全曲とも軒並み揃って「凄過ぎる…!」のひと言では語り尽くせないくらい、兎にも角にも瞬き厳禁で一息つく暇すらも与えないのだから (良い意味で) 困り者ですらある(苦笑)。
ドリーム・シアター、スティーヴ・ヴァイ、果てはジョー・サトリアーニ…etc、etcから多大なる影響を受けたと語るMarianoの音楽的バックボーンの多才さも然る事ながら、プログメタルというルーツをも内包した、エマーソン始めウェイクマン、ダウンズ、ややもすればエディー・ジョブスンですらも遥かに凌駕する、さながらラッセン風なデジタルアートに一新された (ダウンロード時代の手書きで素朴なアートワークも捨て難いが…) イメージ通りの、重厚で且つカオス渦巻くヘヴィなマインド、神憑りにも似たミステリアスでエキゾティックさを醸し出したシンフォニーが奏でられる深遠なるキーボードプレイに追随するかの如く、ハケット的なエモーショナルさを纏った泣きのギターワークと強固なるリズム隊が一糸乱れる事無く創作の大海を織り成す様は奇跡の賜物以外の何物でもあるまい…。
1993年4月28日ブエノスアイレスで生を受けたMarianoの人生こそ、プログレッシヴ・ロックの伝統を継承するために運命が決定付けられていたのかもしれない。
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