Monthly Prog Notes -October-
10月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
炎の如く色付き萌える紅葉に晩秋の雰囲気を覚えつつも、初冬の足音が日に々々感じられる様になった今日この頃、まさしく芸術の秋=プログレッシヴ・ロックの秋という時節柄に相応しい強力ラインナップ3バンドが今回も出揃いました。
2年前にデヴューを飾って以降、年一枚のペースでコンスタンスに新作をリリースし絶大なる不動の評価を得ている、スウェーデンにカナダ、そしてアメリカのミュージシャン達による国境を越えた混成メンバーによる“プロポーションズ”、数えること通算第3作目の新譜が到着しました。
シンフォニック始めジャズロックの素養とスキルが徹頭徹尾存分に活かされ、英国と欧州の詩情とリリシズムを湛えた各々異なるカラーのゲストヴォーカルを迎えた、彼等の全作品に於いて必聴必至…最高にして至高の完成度を誇っています。
イタリアからは強力ニューカマー2バンドがお目見えとなりました。
かのオルメに触発され彼等のトリビュートバンドを経て90年代に結成されつつも、アルバムをリリースする機会に恵まれず、度重なるメンバーチェンジと紆余曲折を経て、漸く2021年に満を持して待望のデヴューと相成った通称G.A.Sこと“グルッポ・オートノモ・スオーナトリ”。
アートワークの意匠始めイタリア特有の(良い意味で)長ったらしいバンドネーミングに、70年代イズムを踏襲した正真正銘の伝統的で正統派の王道を地で行くイタリアン・ロックの醍醐味がここにあります。
片やもう一方のイタリアン・ニューカマーでもある“プレニルニオ”、彼等もまた先のG.A.Sと同様、70年代にバンドが結成されながらもアルバムリリースの機会に恵まれず一度は解散の憂き目に遭いつつも、交友のあったロカンダ・デッレ・ファーテからの後押しで近年オリジナルメンバーが集結しバンドが再編され漸く待望のデヴューを飾る事となった次第ですが、長年培われた音楽経験と技量、力量、コンポーズ能力を兼ね備えたであろう、もはやベテランの域ともいえる彼等もまた正統派イタリアン・ロックの王道を歩む継承者と言っても過言ではありません。
三者三様の音楽世界が築かれ謳い綴られる秋の夜長を、浪漫と抒情に浸りつつ美酒を味わい酔いしれながら、暫しの間現実から遊離して頂けたら幸いです…。
1.PROPORTIONS/After All These Years
(from MULTI-NATIONAL)


1.Hymn For The Giant/2.Birth/3.Octyldodecanol/
4.Fading Away/5.Qubix Cube/6.La Froi/
7.The Confession/8.Jesterdays/9.Eriksberg/
10.Overhinged/11.Calophork/12.Soulmate/
13.After All These Years/14.Hymn For The Giant (Reprise)
2019年、サイケな極彩色に彩られた意匠の『Reboot』でセンセーショナルなデヴューを飾って以降、翌2020年またしても毒々しいサイケカラーな異星人の眼差しという意匠の2nd『Visions From A Distant Past』と、文字通り一年に一枚のコンスタンスなペースで歩みを止めること無く、着実に唯一無比で且つ孤高なる音世界を築き上げて今日までに至る、北欧と北米の実力派ミュージシャン達による混成バンドでありつつも、各国にも点在するであろう幾数多もの同系バンドの理想形にして頂点となった感のプロポーションズ、本作は今年リリースされたばかりの通算3作目に当たる新譜である。
サイケで摩訶不思議、尚且つネイチャーな趣すら窺わせる今作にあっては、デヴュー時と前作をも遥かに上回るくらい徹頭徹尾驚きと感動とリリシズムに色濃く染め上げており、シンフォニックさとジャズィーな表情と側面をバランス良く使い分けたエモーショナルさと相まって、ヴォーカルとコーラスパート入りのナンバーではそれぞれ異なった世界観を見事に謳い上げる男女ゲストヴォーカリストの好演が際立っていて、作品全体にドラマティックな光彩と煌きを与えているかの様である。
パイプオルガン風なイントロダクションに導かれ、あれよあれよという間にいつしか彼等の音楽の術中に嵌まってしまい、ハケットやキャメルをも彷彿させる甘美でミスティックなメロディーラインに、クリムゾン風なリフの刻み方、果てはGG、ハッピー・ザ・マンやケンソーの面影すらオーヴァーラップしてきそうな概ね60分以上に亘るサウンド&マインドの旅(トリップ)に、息つく暇や感動の余韻に浸ることすら忘れてしまうくらいの満ち足りた充実感が約束出来よう。
北欧とカナダのインテリジェントなクールさと、アメリカの持つムーディーなイマジナリーとが互いに違和感無くコンバインし、2021年大きな軌跡として残るべく会心の一枚へとなり得るであろう。
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2.GRUPPO AUTONOMO SUONATORI
/Omnia Sunt Communia
(from ITALY)


1.Alice Spring/2.La Regina a)Il Sogno / b)La Regina/
3.Preludio I/4.Preludio II/5.Il Sacco Di Bisanzio/
6.Beatrice a)Intro / b)Beatrice / c)Beatrice pt.II/
7.Il Richiamo Della Sirena/8.Omnia Sunt Communia
もう如何にもといった感の…良い意味で70年代イタリアン・ロックイズム影響下丸出しな、久しく忘れかけていたであろうイタリアの田舎町の風景を切り取った様な (バンコの名作3rdをも連想させる) そんな感じの意匠に、懐旧な思いすら脳裏を駆け巡ってしまいそうなデヴュー作を引っ提げて、21世紀イタリアン・ロックシーンに颯爽と躍り出た期待の新星、通称G.A.Sことグルッポ・オートノモ・スオーナトリ。
70年代イタリアンによく見受けられがちな長ったらしいバンドネーミングといった、ファンやリスナーの心をもくすぐる細部なこだわり (アナログLP盤に針を落とした独特のプチプチ音のSEに至るまで、そこまでやるかというくらいに…) も然る事ながら、バンドの中心人物でもありリーダーをも兼ねるClaudio Barone自身、オルメのトリビュート・バンド等で培われた音楽経験が端緒となって1997年にバンドを結成して以降、アルバムリリースの機会になかなか恵まれないまま20年以上にも及ぶ演奏活動で場数をこなしてきただけに、漸く満を持してのデヴューアルバムへと辿り着いた万感の思いというか…本作に懸ける意気込みと気合の入り方が、そんじょそこらのポッと出の若手新人とは雲泥の差を見せつける重みと凄みが作品全体に漲っているかの様ですらある。
クラシカルでバロックな表情と、地中海を想起させるアコースティックな旋律、イタリア特有の土着的な陽と陰との対比、妖しげな闇の側面といった様々な要素が混在し内包された、文字通り時空と世紀をも超越した決定版と言っても過言ではあるまい。
御大のオルメ始めオザンナ、RRR、メタモルフォシ…等といった70年代バンドの系譜が脳内でオーヴァーラップすると共に、ウビ・マイオール、ノタベネ、シビコ23といった21世紀イタリアンをも凌駕する計り知れない実力とポテンシャルに、もはや70年代への愛情と憧憬をも越えた筆舌し尽くし難い驚愕と感嘆すら禁じ得ない。
Fasebook G.A.S
3.PLENILUNIO/Il Gioco Imperfetto
(from ITALY)


1.L'aquilone/2.Il Gioco Imperfetto/3.Se Rinascerò/
4.A Piedi Nudi/5.Diario Di Bordo/6.Voci Del Vento/
7.Tutte Le Colpe Che Ho/8.Loro/9.Titoli Di Coda
サイバーな電脳空間に竹馬で遊ぶ子供達が描かれた、何とも郷愁と童心に誘われそうな懐かしさと21世紀らしいイマジナリーが融合した意味深な意匠に包まれたアルバムで、念願で且つ待望のデヴューを飾ったプレニルニオ。
アートワークのイメージからしてサイバーパンクなエレクトリックミュージックないしメロディック・シンフォの類かと思いきや、かの伝統的なカンタウトーレ系にも相通ずる70年代歌物プログレッシヴ…強いて挙げればレアーレ・アカデミア・ディ・ムジカ始めロカンダ・デッレ・ファーテ、グルッポ2001、果てはオディッセアをも彷彿とさせる、心の琴線を揺さぶるアコースティックな佇まい、牧歌的でたおやかなイメージを伴った歌心に、地中海の微風或いは陽光の輝きと匂い、陰影を帯びた詩情と抒情が織り成す…といった、多くのイタリアン愛好者とリスナー諸氏が思い描くであろう正真正銘混じり気一切無しの限り無く純粋無垢な理想形ともいえるイタリアの伝承と“音”がここにある。
70年代半ばにイタリア北西部ピエモンテ州にて結成されながらも、先に紹介したG.A.Sと同様彼等もアルバムリリースの機会に恵まれず夢破れて一度は解散への道を辿るものの、長年交流のあったロカンダ・デッレ・ファーテからの助言と後押しの甲斐あって、近年オリジナルメンバーが再集結し漸く陽の目を見る事となった次第である。
哀愁とファンタジックに彩られたイタリアン・ロックもう一つの顔と表情が如実に表れた、まさしく万人のリスナーが愛して止まない、人生の機微…喜びと悲しみを物語る崇高で味わい深い一枚を是非貴方 (貴女) の心で受け止め心震わせて頂けたら幸いである…。
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