Monthly Prog Notes -November-
2021年も残すところあと一ヶ月少々となりました…。
肌寒さが感じられた晩秋から凍てつく様な冷たい初冬へ、常套句かもしれませんが季節の移り変わりの早さ、一年はあっという間に過ぎ去るものと改めて痛感する思いです。
11月今回の「Monthly Prog Notes」は、世紀を跨いで今なお現役で活躍している大ベテラン始め、経験豊かに培われた中堅どころと多種多才なラインナップが出揃いました。
久々に取り挙げるジャーマン・プログレッシヴから、1971年のデヴューから1973年の一時的な解散を経て、21世紀の2001年にメンバー総入れ替えで再結成を果たし、完全なるシンフォニック・ロック路線へと転向したベテランクラスの“アバカス”の通算第8作目の新譜はスコットランド王ロバート1世の生涯をモチーフにバンド結成50周年記念作という意味合いを含ませた、文字通り正統派ジャーマン・シンフォニックの底力とプライドが垣間見られる、堂々たる王道の強みを地で行く傑作級の力作に仕上がってます。
北米カナダからも素敵な便りが届きました…。
21世紀ネオ・プログレッシヴの範疇ながらも、ジェネシス+トニー・バンクスを始めキャメル、EL&P、果てはUKといったブリティッシュ・プログレッシヴからの多大なる影響と仄かな香りすら窺い知れるキーボードトリオ系の決定版“モナーク・トレイル”通算3作目の新譜、デヴュー作並び前作で描かれた女性から感じられたミスティックでセンシュアルなイメージから一転して、傾く日差しに煌々と照らされるカナディアン・ネイチャーが描かれた、まさに聴き手側の皆が真っ先に想起するであろう…北米の欧州そのものを音とヴィジョンで構築した、至福で心洗われる秀作となりました。
アルゼンチンと並ぶ南米のプログレッシヴ大国ブラジルからは、ダークでオカルティックな佇まいにヘヴィ・プログレッシヴとサイケで妖しげな雰囲気を漂わせた“マー・アッソムブラド”の、こちらも通算第3作目に当たる新譜の必聴作が遠い海を越えて到着しました。
2015年のデヴュー以降、一貫してブリティッシュ・ヘヴィロック影響下に加えポルトガル語で謳われる正統派ブラジリアン・プログレッシヴの精神と誇りを頑なに守り続けている真摯な姿勢と、大航海時代の海洋冒険譚に邪悪なモンスターが絡むというアートワークは、彼等の持ち味にしてセールスポイント面でも大きな強みとなっています。
寂寥感漂う木枯らしに吹かれ、重く深く垂れ込めた曇天の冬空を見上げつつ秋の終わりを感じながら、幻想と抒情を奏でる楽師達の冬の序曲にそれぞれの思いを馳せて頂けたらと思います。
1.ABACUS/Highland Warrior
(from GERMANY)


1.Into My Life/2.Now You Are Gone/3.Rule The World/
~Robert The Bruce~
4.Highland Warrior/5.My War Is Over Now/
6.Lay Down Your Sword/7.The Voice/
8.On My Way Home/9.Shelter
1971年にデヴューを飾り73年に一時的な(?)解散劇を経て、21世紀を迎えた2001年にオリジナルメンバーが一切不在の総入れ替えの形で、完全にシンフォニックスタイルの別バンドへと新生したアバカスであるが、本作品は通算8作目ながらも…2001年リーダー格にしてキーボードからギターまで手掛けるJürgen Wimpelbergを筆頭主導に再結成してからは、70年代版は全くの別物として考えれば新生してからはこれで4作目に当たるのだろうか (何だかややこしいが…)。
21世紀新生版となってからは欧州の様式美と伝統、或いは歴史的な雰囲気や佇まいといった荘厳にして重厚なイメージが、アートワークのみならず現在の彼等のサウンドスタイルにも存分に反映されており、70年代キーボードトリオ風ヴィンテージ感に21世紀のイディオムとスタイリッシュなセンスが違和感無く融合しており、今作でも組曲形式の「Robert The Bruce (スコットランド王ロバート1世)」でも、さながらEL&P(パーマーでもパウエルでも)、果ては北欧のパル・リンダー・プロジェクトにも相通ずるハモンドにメロトロン、デジタルキーボード系が縦横無尽に繰り広げられ、さながら疾風怒濤の如くめくるめくシンフォニックな展開と、ケルト風な趣にアコースティックな側面、女性コーラスとが一糸乱れる事無く渾然一体となった文句無しに決定的な一枚へと結実している。
その一方で路線変更か?キャラ変したのか?と一瞬思わせる様な前半3曲のポップでキャッチーな作風も、何とも実に良い意外性が垣間見えてて素晴らしい。
バンド結成50周年記念作品と銘打っているが、そんな売り文句諸々を抜きにしても最高のテンションと完成度に、心の底からシンフォニック・ロックが好きで本当に良かったなぁと改めて思える会心作でもある。
Abacus Official Website
2.MONARCH TRAIL/Wither Down
(from CANADA)


1.Wither Down/2.Echo/3.Canyon Song/
4.Waves Of Sound/5.Megalopolitana/6.All Kinds Of Futures
夕暮れに染まりつつある美しきカナダの大自然のフォトグラフを素材としたアートワークに心と目が奪われる。
2014年のデヴュー作『Skye』、そして2017年の2nd『Sand』に続く待望の新譜3rdの本作品をリリースしたカナディアン・リリシズムシンフォニックの雄モナーク・トレイル。
朧気ながらもミステリアスでセンシュアルなイメージの女性像が描かれてきたデヴュー作と前作とは打って変わって、自国の美しくもどこか厳しささえ想起させるナチュラルな意匠と相まって、長年プログレッシヴ畑で数多くのキャリアと経験を誇るマルチプレイヤー兼リーダーKen Bairdの、流麗で且つ繊細なキーボードワークが色鮮やかな四季折々の自然賛歌を謳い奏でるハートウォームでヒューマニティーな創作姿勢に感動を覚え胸が熱くなる。
リズム隊の好サポートも然る事ながら、ゲスト参加のギタリストが要所々々でアクセントとインパクトを与えており、ブロードウェイ期のジェネシス(+バンクス)や後期~リアルタイムなキャメルにも匹敵する、エモーショナルな佇まいに一種アンビエントな夢見心地に誘ってくれるタッチのピアノワークを耳にする度、プログレッシヴ・ロック創作の本懐とはやはりこうであるべきだと改めて認識させられてしまう。
もはやネオ・プログレッシヴという概念や範疇云々の垣根を越えつつも、メロディック・シンフォという安易な路線とは完全に一線を画した“純音楽への衝動”のみが存在する、傑作級にして至高の贈り物と言えよう。
Facebook Monarch Trail
3.MAR ASSOMBRADO/Geografias Estranhas
(from BRAZIL)


1.Intro - Abditae Causae/2.Geografias Estranhas/
3.O Poco/4.Se Além Da Escuridão/5.O Wurdalak/
6.As Horas/7.Ao Som Dos Tritões/
8.Geografias Passadas/9.Para Dentro Da Árvore/
10.O Bosque Das Eumênides
大航海時代の海洋冒険譚にラヴクラフト的な幻獣怪奇譚が融合したかの様な、見た目インパクト大のアートワークに思わず魅了されてしまう本作品は、正統派ブラジリアン・ヘヴィプログレッシヴの系譜を脈々と受け継いだ数少ない21世紀の雄マー・アッソムブラド通算3作目の新譜である。
2015年のデヴュー作並び2017年の2nd、そして今作に至るまで一貫して、海にまつわる怪異譚や妖獣・幻獣をモチーフにしたアートワークが彼等の代名詞であるといっても過言ではあるまい。
見た目が見た目であるが故に、ジャンル違いのダーク&ブラックメタルみたいなあらぬ誤解を招いてしまいがちになるが、バンドの中心人物でもありストーリーテラー&コンポーザー (ギター&ベース、アコギ、ヴォーカル) をも兼ねるAndré De Senaが目指す、ポルトガル語の響きとイントネーションを活かしたポエジーで文学的、神話と歴史に裏打ちされた趣味嗜好の世界観を複雑怪奇な迷宮の如く構築しているのが特色である。
ややもすればかつてのMr.ドクター率いるデヴィル・ドールと同一系かと連想しつつも、あくまで彼等の音楽的礎は70年代のハード&ヘヴィ系からプログレッシヴ、サイケデリックといったヴィンテージなブリティッシュ・ロック影響下を内包した、ストレートで実にカッコイイ切れのあるサウンドであると言ったら御理解頂けるであろうか…。
オルガン系のキーボード始め女性ヴォーカル(+語り)、ヴァイオリン、フルート、サックス等といった多才なサポート陣の好演が、彼等の紡ぐ物語に奥行きと深みを与えており、本家イタリアン・ヘヴィプログレッシヴに負けず劣らずなダイナミズムと闇のエナジーが聴く者の脳裏に響鳴すること必至であろう。
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