Monthly Prog Notes -March-
3月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
桜前線の北上に伴い、凍てつく様な厳寒の冬から漸く待望の桜舞い散る新たな出発(旅立ち)を予感させる春の訪れが再び巡って来ました。
期待と希望に胸躍らせながらも、先日の「夢幻の楽師達」でも綴りましたが…別れの春と新たな出会いの春とが交錯する時節柄、個人的ではありますが私自身も39年ないし40年勤めてきた職場を、一身上の都合ではありますが早期定年前退職する運びとなり、この場をお借りして御報告させて頂く次第です。
もう翌月の4月1日から、決してエイプリル・フールではなく次なる新しい職場にて勤める事となり、身も心も気持ちも新たに60手前の新人一年生として再出発いたします。
60手前のまだまだ若輩者ながらも、今後も生業を兼ねて今まで通り『幻想神秘音楽館』はこれからも継続して参りますので、何卒御支援と御愛顧の程を宜しくお願い申し上げます。
ウクライナにもいつか必ず訪れるであろう平和と自由の春が訪れる事を願い信じて…。
今月のラインナップは西欧勢のイタリア、イギリス、スペインから、ベテランチームの再出発から、生え抜きで新進気鋭なニューカマーの登場と多彩な顔ぶれが出揃いました。
久々のイタリアからは、70年代の名作5指に入るであろうルスティチェリ・エ・ボルディーニ『Opera Prima』から、実に48年ぶりに再浮上を遂げたドラマーの名匠Carlo Bordiniが新たなキーボード奏者Gianluca De Rossiと強力タッグを組んだ、21世紀版『Opera Prima』…否!それ以上の構築美と荘厳なる交響詩を創作した決定版へと昇華した“デ・ロッシ・エ・ボルディーニ”新たなる再出発作がお目見えと相成りました。
21世紀イタリアンのみならずイタリアン・ロック史上にまた新たな軌跡(奇跡)となるであろう、名実共に超弩級なる必聴必至の傑作を是非体感してみて下さい!
2022年のブリティッシュ・ニューカマーから、早くも次世代期待の担い手として称賛され、これからの動向に注視されるであろう、ギター始めキーボード&プログラミング、サックス、果てはヴォーカルまで多種多才に手掛けるマルチプレイヤーAndy Fosterを核とするシンフォニック・プロジェクトチーム“カイト・パレード”の堂々たるデヴュー作が到着しました。
ジェネシス始めイエス、IQといった先人達からの大きな影響を感じさせながらも、決して冗長にならず起伏とメリハリの利いたモダンで鮮烈なるエッジ感を聴かせるブリティッシュ・プログレッシヴの王道を地で行くスタイルに、改めてプログレッシヴを長年愛聴して良かったと頷ける会心の一枚です。
情熱とラテンのパッションが満ち溢れるスパニッシュ勢から、今なお現役第一線の大御所メディナ・アザハラ、そして70年代の名匠アッティラやデヴュー初期のタランチュラといった系譜やDNAを脈々と受け継いだ期待の新星“ヴァンダルス”衝撃のデヴュー作がお目見えとなりました。
御多聞に漏れず21世紀スパニッシュ勢も然り、無国籍風でグローバルな視野をも見据えた時代相応の作風がもてはやされる中で、今なお純粋無垢なるスペインのイデオロギーやアイデンティティーを頑なに守り続けている、誰しもが頭に思い描く理想的なスペイン民族の旋律と血を感じさせるヘヴィでハードなプログレッシヴは、久しく忘れかけていたスパニッシュ・プログレッシヴ本来の伝統と醍醐味が色鮮やかに甦る快作と成り得るでしょう。
春霞と温かな陽光の下…桜咲く風情を愛でながら新たな希望の光に思いを馳せつつ、次なる時代を受け継ぐべく謳い奏でる高潔な匠達の饗宴に、暫し現実から遊離してその身を委ねて頂けたら幸いです。
1.DE ROSSI E BORDINI/De Rossi E Bordini
(from ITALY)


1.Il Pozzo Dei Giganti (Inferno, XXXI)/2.La Porta Nel Buio/
3.Natività/4.Cammellandia
1973年のイタリアン・ロック黄金期、RCAイタリアーナのスタジオ・ミュージシャンだったPaolo RustichelliとCarlo Bordiniのデュオ…通称ルスティチェリ・エ・ボルディーニの唯一作にして神憑りにも近い奇跡の名作として名高い『Opera Prima』から実に48年、21世紀の今もなお現役第一線のドラマーとして数多くものセッションに参加しているCarlo Bordiniが、満を持して今までの思いの丈をぶつけたと言わんばかりに新たなマテリアルを立ち上げた2021年末リリースの本作品。
Paolo Rustichelliに代わって新たな女房役となったのは、21世紀イタリアン・シーンの誇るベテランキーボードトリオTAPROBANのキーボーダーGianluka De Rossiが務める事となり、こうして新たにデ・ロッシ・エ・ボルディーニとして再スタートを切る事となった次第である。
ダンテの『神曲』をモチーフにかのウイリアム・ブレイクが描いた絵画を、De RossiとBordiniの両名がリアレンジしレイアウトをも手掛けた、まさしく神々しさと禍々しさとが同居した意味深なアートワークのイメージと相まって、『Opera Prima』で感じられたたおやかで壮麗な構築美から一転し、EL&P…或いは『Inferno』期のメタモルフォシをも彷彿とさせるイタリアン・ロック十八番の邪悪な闇のエナジーが迸る攻撃的でテクニカルなキーボードが縦横無尽に駆け巡り、それにBoediniの力強いドラムとパーカッションが追随するというスタイルは今作でも健在で、長年培われたキャリアと技量に裏打ちされたベテランの域すらも垣間見え、コンビユニットでありながらもロックの可能性と自らの振り幅の大きさを如実に物語る、21世紀の若手勢には一朝一夕で真似出来ないくらい“匠”という名の職人技が燻し銀の如く燦然と光り輝く、新旧のイタリアン・ファン問わず必聴必至で手放しな賞賛に値する秀逸な一枚に仕上がっている。
ボーナストラックとして3曲目と4曲目に収録された『Opera Prima』期の名ナンバー2曲が、新たなライヴ音源で聴けるのは落涙もので実に嬉しい限りである。
Facebook De Rossi E Bordini
2.KITE PARADE/The Way Home
(from U.K)


1.Letting Go/2.Strip The Walls/
3.This Time/4.Suffer No Longer/
5.Going Under/6.The Way Home/
7.Stranded
渇ききって干からびた様なハートを慈愛の手が優しく包み込む…そんな意味深な解釈すら窺えるであろう、2022年ブリティッシュ・プログレッシヴから期待の新星として瞬く間に注目を集める事となった、ギター始めキーボード、サックス、ヴォーカルと多才に手掛けるマルチプレイヤーAndy Fosterをメインに立ち上げられたシンフォニック・プロジェクトでもあるカイト・パレード、威風堂々たるデヴューの本作品がここに到着した。
ジェネシス始めイエス、果てはIQからも多大なる影響を受けた今作に於いて、メロディック・シンフォやらネオ・プログレッシヴといった凡庸なカテゴリーや概念とは異なった一線を画する、ブリティッシュ・プログレッシヴ本来の持ち味やら醍醐味、果てはロックの持つスリリングな曲展開が濃密に凝縮された、21世紀シンフォニック往々にしてありがちな冗長さや無駄な捨て曲が一切皆無なキャッチーなメロディーラインに加え、ハートフル&ウォーミングで突き抜ける爽快感と、エモーショナルさとリリシズムが隣り合ったファンタスティックなマインドが聴き手の脳内を伝って、ラスト大曲の大団円に至るまで感動的に締め括られる事必至であろう。
秀でたシンガーソング・ライティングも然る事ながら、メロディー・メーカーとしてコンポーズ能力、アレンジャーとしての高いスキルが存分に発揮され、スポックス・ビアード始めビッグ・ビッグ・トレインのNick D'Virgilioに、ウィッシュボーン・アッシュのJoe Crabtreeといった名うてのドラマー2人、ベーシスト、ピアニストの少数精鋭をゲストに迎え、柔と剛、押しと引き、起伏とメリハリが明確に活かされつつも、多重録音系で陥りがちな一本調子やら独りよがり、決して自己満足に終止する事無く、極めて純粋無垢な衝動で且つシンプルにロックバンドなスタイルを全面に押し出したアプローチには好感が持てる。
ソロワーク発展形なプロジェクトという出発点から、今後どの様にどんな方向性に転化しプログレスしていくのだろうか…大いに楽しみであると同時に、Andy Fosterその人の動向と創作意欲に興味が尽きない。
Facebook Kite Parade
3.VÁNDALUS/Vándalus
(from SPAIN)


1.Ensueños/2.Un Mundo Nuevo/3.Mujer/
4.Mi Tierra/5.Lo Que Tu Me Das/6.Veo/
7.Hamman/8.Indiferencia/9.Salud Y Rock Andaluz/
10.Fatigas
良し悪し云々や出来不出来を抜きに、昨今の21世紀プログレッシヴ・シーンはグローバルな視野を見据えた前提で、所謂猫も杓子もどんな国であろうと英語の歌詞と無国籍風な作風のネオ・プログレッシヴ、メロディック・シンフォが万国共通という暗黙の了解が主流となっている (と思えてならない…)。
ことイタリアやスペイン、ポルトガル、果てはブラジルにアルゼンチンといったラテン系のイデオロギーとパッション、情熱、アイデンティティーを有する国にあっては尚更の事、ワールドワイドな作風になればなるほどお国柄というか“らしさ”が失われつつあるみたいで、若干不満の一つや二つ出てくるのは (些か我が儘と思われるかもしれないが) いた仕方あるまい…。
それでも21世紀のスペインに於いて、少数か否かは定かではないにしろまだまだスパニッシュな旋律と情熱を頑なに保持しているバンドが、近年結構と輩出されているという事に喜びと嬉しさは隠せない。
過去にシングル作品をリリースし好評を博し、2022年漸く待望のデヴューアルバムへと辿り着いたアンダルシア地方期待の新星ヴァンダルスが良い好例で、大御所級ベテランバンドのメディナ・アザハラ、70年代の名匠アッティラ、果てはデヴュー初期のタランチュラをも彷彿とさせる、我々が思い描く理想的なスパニッシュ・スピリッツとラテンの情熱が迸り、フラメンコテイストな楽曲と歌唱力、アラビックな異国情緒香る佇まい、ヘヴィでハードなプログレッシヴマインド、ハモンドを多用したヴィンテージカラーが鈍く光を放つサウンドスタイル、あたかも墜落天使=Fallen Angelを想起させる美しくも残酷な意匠総じて、実にニューカマーらしからぬ意表を突いた豪胆さとしたたかさに加え、繊細で抒情的な両面性を兼ね備えた個性派な曲者ここに登場!…と、聴き手側の我々も心から割れんばかりな拍手喝采を贈らねばなるまい。
21世紀スパニッシュ・プログレッシヴもまだまだ捨てたもんじゃないな…。
Facebook Vándalus
スポンサーサイト