Monthly Prog Notes -May-
5月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
初夏から本格的な夏本番へと、季節の移り変わりの早さに感慨深さと複雑な思いを抱くと共に、夏に相応しいプログレッシヴへの付き合い方に思案している今日この頃です (苦笑)。
私自身も年齢が年齢であるが故、毎年の事とはいえ…だんだん夏の暑さに加えて鬱陶しくも汗ばむ夏の気候と、梅雨時特有の不快指数全開な狂おしい蒸し暑さに心身ともに辟易してしまい、プログレッシヴに接するのも億劫になってしまいそうな感すら覚えます。
そんな本格的な夏への季節の変わり目に相応しく、今回はここ最近盛況著しく比例するかの如く気を吐き続け、コロナ禍なんぞものともせずに以前にも増して良質で高水準な作品を輩出している中南米と日本のシーンから、彗星の如く降臨し来るべき世代を担うであろう…期待の新鋭3アーティストがここに出揃いました。
南米のヨーロッパことアルゼンチンから鳴り物入りでデヴューを飾った“メレット”は、各方面に於ける前評判の高さも然る事ながら、一朝一夕では決して為し得ないその秀でた音楽性とコンポーズ能力の高さに加え、傑出且つ突出したユーロロックイズムが色濃く反映された、海の向こうのイタリアン・ロックやスパニッシュ・ロックの持つ煌きと情熱、光る知性とリリシズムが縦横無尽に繰り広げられる要注目にして要必聴なる会心の本デヴュー作、まさしく絶対的な自信作と言っても過言では無い位のヴォリュームとテンションで聴き手に筆舌し難い感動と衝撃をもたらすことでしょう。
日本からはここ数年関東圏のプログレッシヴ・シーンに於いて大きな話題性と注目を集めている、アウター・リミッツのギタリスト荒牧隆 (現 荒牧隆子) が心機一転、新たなマテリアルとして結成した通称あらんちゃんバンド(仮)こと“ACB (K)”が、ここに遂に満を持して待望のデヴューを飾る事となりました。
些か俄か的な冗談っぽいネーミングでAKB的な英字省略ではあるものの、音楽性にあってはかつてのアウター・リミッツですらも遥かに上回るであろう、近年の那由他計画やイヴラークにも迫る硬派で重厚、深遠で荘厳なるヘヴィ・プログレッシヴ&シンフォニックが構築された、悶絶必至なる会心の入魂作となってます。
中米メキシコからも先月紹介したアルテファクトロンと同様、昨今のメキシカン・プログレッシヴの活況著しい充実ぶりを物語るかの如くデヴューを飾った“エレクトロ・コンプルッシヴ・セラピー”に要注目。
ラテンのパッションと佇まいを残しつつもメキシコ特有のヴィジュアルやイメージが稀薄で、むしろブリティッシュ系…或いはポーランド系ネオ・プログレッシヴの息吹きをも想起させる、冗長気味なメロディック・シンフォやらポストロックすらも凌駕し、エモーショナル&アンビエントで尚且つソリッド&ハードな曲展開、アグレッシヴ且つセンシティヴなサウンドストリームに新たなメキシカンシーンの風と潮流を感じずにはいられません。
夏本番の熱気すらもクールダウンな爽快感へと転じさせる、インテリジェントで高潔な誇り高きプログレッシヴ・フィールドの現在 (いま) を闊歩する匠達が紡ぐ交響詩に、暫し時と現実から遊離して耳を傾けて頂けたら幸いです。
1.MERÈT/Ceremonias
(from ARGENTINA)


1.Leve/2.El Alquimista/3.Un Largo Camino A Fin De Mes/
4.Podrás Ilorar/5.Plano Astral/6.Intro Ceremonias/
7.Ceremonias/8.Levissimo
エジプトの神殿というまさしく神々しくも一種近寄り難い…そんな深遠で荘厳たるイメージのフォトグラフを意匠に、各方面からの称賛と前評判も手伝って鳴り物入りで堂々たるデヴューを飾る事となった、早くも21世紀アルゼンティーナ・プログレッシヴ期待の新星にして次世代の担い手との呼び声が高いメレット2022年のデヴュー作が到着した。
ツインギターにキーボード、ヴァイオリン、そしてリズム隊の6人編成による布陣で、アルゼンティーナ・プログレッシヴの伝統と王道を地で行きながらも、イタリアとスペイン由来のシンフォニックのエッセンスが加味された、70年代アルゼンチン特有の熱情と抒情、気概とアイデンティティーが時代と世紀を経てソフィスティケイトされ、幾分ソフトで軽快な…所謂良い意味で21世紀という時代相応のハートウォーミングで親近感すら抱かせる音楽性と作風が聴き手に心地良さと安堵感を与えてくれる事だろう。
古今東西のプログレッシヴ史に於いてヴァイオリンをフィーチャリングしたバンドは数あれど、かのアルティ・エ・メスティエリ始めサグラド、果てはソルスティスやミダスに心惹かれる方ならきっと最良にして至高の贈り物であると断言出来よう。
今デヴュー作リリース後、専任キーボーダーが抜けてしまいメンバーチェンジによって今後の展開や動向が注視されると共に、次回作でまたどんなアプローチや変化が訪れるのか興味深々でもあり期待感が高まりつつある。
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2.ACB(K)/Siblings
(from JAPAN)


1.Tearing Apart/2.100+ Days/
3.Siblings
c.1C. Amphitheatrvm Flavivm
c.5C. 事の語り事も此をば (This Is A Story Of A Love Affair How It Went)
c.9C. Beachy Head
20C. 高貴な人と輝ける名声 (Her Noble Nature And His Glorious Fame)
21C. Alice, Bob And Charlie
まるで打ち上げ花火の会場(!?)などといった冗談はさておき、摩訶不思議で意味深なモニュメントかオブジェ…あるいはストーンヘンジをも想起させる古代神殿の遺跡をも彷彿とさせるフォトジェニックな意匠に思わず目を奪われる。
近年集散を繰り返してきた感すら抱かせる関東の雄アウター・リミッツから離れたギタリスト荒牧隆こと…現在荒牧隆子が、満を持しての心機一転自らが理想とする本当に演りたい音楽を志向(指向)し、試みの地平線を実践すべく関東圏の名立たるバンドメイトとゲストプレイヤーを招聘し、自らのニックネームを引用し些か冗談めいた様な…あたかも即席と思い付きで命名したかの様なあらんちゃんバンド(仮)としてそのまま名乗り続け、気が付いたらいつの間にかAKB的な横文字省略型でネーミングしたACB(K)として定着し、あれよあれよという間にデヴューアルバムへと上り詰めた奇跡と幸運の賜物そのもと言っても差し支えはあるまい。
奇跡の賜物も然る事ながら、収録された全曲のどれもがヘヴィ・プログレッシヴ&シンフォニックな洪水が寄せては返すといった聴き処満載で無駄と冗長さが皆無な、名実共に完全無欠なハイクオリティーと完成度を誇る、ジャパニーズ・プログレッシヴの実力とプライドが曲の端々で燻し銀の如き光沢を放つ、時空と世紀をも超越した神話と伝承が渾然一体となった過去現在未来のベクトルが一気にシンフォニックワールドへと集約した、神々しくもヒューマンな温もりを感じさせる。
これこそ21世紀版日本プログレッシヴの頂ともいえる純粋無垢にして高邁な意思の証でもあり形となった最高傑作の誕生を、今はただ心から瞼を熱くして祝福の言葉を贈りたい…本当にありがとう。
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3.ELECTRO COMPULSIVE THERAPY
/Electro Compulsive Therapy
(from MEXICO)


1.Glow/2.Colors Fade Away/3.Blackstar/
4.Gemini/5.In Through The Light/6.Walking Ghost/
7.Stop…Wait And Transcend/8.Supernova
先月の冒頭で紹介した同国のアルテファクトロンとほぼ同時期にデヴューを飾り、そのあまりにブリティッシュナイズされたメロディック・シンフォなサウンドワークと作風で、瞬く間に注目を集める事となった、メキシカン・プログレッシヴ期待の新鋭エレクトロ・コンプルッシヴ・セラピー、本作品は2021年暮れにリリースされた記念すべきデヴュー作である。
紅の血潮の如き生命力と自然との調和すらも想起させ、あたかもトワイライトの幻影すらも聴き手に抱かせるであろう…そんな鮮烈でインパクト大なイマージュとヴィジュアルにも違わぬ、もはやポッと出のネオ・プログレッシヴ云々やら思い込みだけの安直なポストロックすらも遥かに凌駕し、メロディック系でありながらも厳寒で冷徹な雰囲気のポーランド系にも相通ずる、良い意味でその中米らしからぬエモーショナルさとアンビエントな空気感に加えて、ギルモアばりの泣きのギターに、収録された全編英詞によるジェントリーで且つメランコリックな憂いを帯びたヴォーカリスト兼キーボードのスキルと歌唱力の高さ…等、メキシコ特有の熱気やアクの強さが殆どと言って良い位に稀薄で、あくまでブリティッシュナイズ指向のグローバルな視点で現世と対峙した、メキシカンシーンの次世代を背負って立つであろう先駆者としての揺るぎ無い決意と気概が漲っている秀逸なる一枚と言えるだろう。
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