Monthly Prog Notes -June-
6月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
鬱陶しくて忌々しく…さながら狂おしい梅雨時の纏わり付く様な蒸し暑さが続き、いきなり想定外の大雨と落雷や河川の増水に見舞われたかと思いきや、嵐が過ぎ去ったかの如くこれまたいきなり梅雨が明け、今度は夏本番の陽光燦々で突き刺さる様な猛酷暑の到来に、正直心身ともに慣れたり付いていくのが精一杯というのが正直なところです(苦笑)。
そんな温暖化現象を物語る様な常軌を逸した夏の暑さと暫く上手く付き合いながらも、私自身の心はもう今から早くもプログレッシヴの秋到来を心待ちにしている今日この頃ですから、世話はありませんね…。
梅雨明けと猛酷暑の真っ只中、今回も選りすぐりの強力ニューカマー3バンド揃い踏みのラインナップとなってます。
ここ最近…かつて無い位に往年の70年代にも似た気概と機運を感じさせるイギリス勢から久々に期待大のニューカマーが登場しました。
THIS WINTER MACHINEの元ギタリストが結成した、正統派のブリティッシュ・プログレッシヴたる王道を継承したであろう“ゴースト・オブ・ザ・マシーン”の鮮烈なるデヴュー作は、よくありがちな冗長気味で凡庸、ギターソロ延々垂れ流し感みたいなメロディック・シンフォとは一線を画し、尚且つ英国の抒情性とイマジナリーを湛えたドラマティックで緩急自在な起伏感に泣きのメロディーラインがエモーショナルで美しく、早くもマリリオン影響下次世代の最右翼に躍り出そうな勢いすら抱かせます。
ユーロ・プログレッシヴのメッカと言っても過言では無いイタリアから登場した新鋭“リンガラド”にも要注目です。
あたかも深遠なる森の北欧プログレッシヴ風なシチュエーションを内包しつつも、トールキンからインスパイアされたフォークシンガーが過去にリリースしたソロ名義のワークからセレクトし、新たに自らが先導するバンドスタイルとして再出発を図った、リレコーディング+新曲の構成による牧歌的でフォーキーな森の中の吟遊詩人さながらな、次世代イタリアン・ロックの新たな可能性すら示唆する意欲作に仕上がってます。
日本のプログレッシヴのみならず次世代プログ・メタルの大いなる期待と可能性をも禁じ得ないであろう、関西から久々に登場した期待の新星“ザ・シーグレープス”昨春リリースされたフルレングスのデヴュー作は、彼女達の様な類稀なる秀でた存在すら看過していた自分自身への自戒と猛省を込めて、今回急遽この様な形でレヴューに取り挙げた次第です。
ジャパニーズメタルを基盤としながらも多種多才な音楽的素養が内包された、極端な話…ラッシュ始めクイーンズライク、果てはドリーム・シアターにも匹敵するアグレッシヴ&プログレッシヴ、アートワークのイメージに寸分違わぬリリシズムとロマネスクに満ち溢れた関西発21世紀プログ・メタルの新たな幕明けすら思わせます。
猛酷暑な夏本番の到来ながらも、涼しい部屋でホットでクールな激情と抒情、知性と感性のせめぎ合いが織り成す聡明な楽師達の饗宴に暫し耳を傾け、ほんの束の間でもいいから暑さと時間を忘れて頂けたら幸いです。
1.GHOST OF THE MACHINE
/Scissorgames
(from U.K)


1.Scissors/2.Mountain/3.Just For Reference/
4.January's Child/5.Mercury Rising (Part I And II)/
6.Dead To Me/7.Scissors (Reprise)
バンドのネーミング含め意匠のイメージといい、さながら士郎正宗原作の『攻殻機動隊』をダークな雰囲気で描いたらこうなったといわんばかりな感を受ける、そんな意味深で鮮烈なアートワークに包まれ、THE WINTER MACHINEの元ギタリストが満を持して結成した、21世紀ブリティッシュ・シンフォニック期待の新星ゴースト・オブ・ザ・マシーン、2022年デヴュー作がここに遂に到着した。
些かダークでサイバーなイメージを湛えたデザインながらも、肝心要なサウンド面ではブリティッシュ・プログレッシヴの伝統と王道を地で行く様な、英国のロマンティシズムとリリシズム、翳りを帯びたドラマティックな曲想と展開、構成、果てはエモーショナルなヴィジュアルに至るまで一切の無駄が微塵も感じられない、テクニカルさとキャッチーさが互いに交錯するメロディーラインの美しさに、いつしか時が経つのも忘れて彼等の描く妖しくもファンタジックな世界観の深みにどっぷりとはまり込んでしまいそうな…そんな中毒性すらも孕んだ領域に魅入られてしまいそうだ。
マリリオンからの多大なる影響を感じさせながらも、時折御大のジェネシスやラッシュといったリスペクトすらも匂わせつつ、大概が冗長気味で凡庸、退屈極まりないメロディック・シンフォ系とは雲泥の差である事を物語る、文字通り繊細さと豪胆さが同居した次世代ブリティッシュ・シンフォニックの指針にして鑑となるべく、本デヴュー作以降これからの彼等の動向に我々聴き手側も大いに注視し、彼等が目指すべき理想の音楽世界に受けて立たねばなるまい。
Facebook Ghost Of The Machine
2.LINGALAD/Venti Di Foresta
(from ITALY)


1.Lingalad/2.Beren E Tinuviel/3.Il Volo Dell'aquila/
4.Seguo Il Sole/5.La Foresta Di Fangorn/6.Cuore Di Pietra/
7.Oltre Il Confine/8.Nel Diario Di Maria/9.Il Profumo Del Tempo/
10.Navadrom/11.Il Grigio Viandante/12.Toni Il Matto/
13.Il Vecchio Lupo/14.Respiro
イタリア国内では珍しいトールキン影響下にインスパイアされたフォークロックで独自のソロ活動を行っていたGiuseppe Festaが、満を持してバンドスタイル形式で先導し再スタートを切った、まさに次世代イタリアン・ロックの一片を担っていくであろうリンガラドの、本デヴュー作品は2020年にリリースされ機が熟したと言わんばかり漸く日本に到着した、ジャケットの意匠そのままのイメージを湛えた、イタリアというよりもむしろどことなく北欧のイメージ…或いはアルプス山脈の森林地帯をも想起させ、バンド名の由来となっている“木々の歌” (トールキン作品の妖精の言葉でもある) そのものが彼等の身上 (信条) であることを牧歌的且つ繊細に物語っているかのようだ。
看板に偽り無しの如く、森の生命力…自然への回帰…森羅万象といった主題が全面的に押し出された、あくまでアコースティックな感触を重視し優しくも慈愛に満ちた歌心溢れるヴォイスにフルート、ティンホイッスルの温かくもナチュラルな音色が、カンタウトーレ系や地中海色といった従来のイタリアンカラーとは趣が異なり、大御所ジェスロ・タルやチェレステとの類似点もやや散見出来るものの、あくまでもケルティックな雰囲気とイマージュに染まった吟遊詩人達の宴、指輪物語での中つ国のホビット達の息遣いが聴き手の脳裏にまざまざと甦ってくることだろう。
派手な展開こそ無いが幾重にも綴れ織りとなった木の温もりと呼吸を感じさせる音世界が、文明社会やら現実世界に疲弊した貴方 (貴女) 達の渇いた心に、ほんの束の間の潤いと癒しを与えてくれるに違いない。
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3.THE SHEGLAPES/Seiren
(from JAPAN)


1.Seiren/2.Speechless/3.Gothic Queen/
4.Silent Survivor/5.Wannabeee/6.Lost/
7.Rubbish/8.Thanatos/9.Carry On!!/
10.Nostalgia/11.泡沫
神の導きか…或いは悪魔の囁きか…といったくだりはともかく、21世紀ジャパニーズ・ロックに大きな激震に等しいインパクトが到来したと言っても過言ではあるまい。
日本の正統派なHM/HRのみならず、プログレッシヴといった両方面から絶大なる支持を得て、来たるべき時代を告げる大いなる逸材が関西のシーンから久々に登場した。
沖縄名物の海ぶどうからネーミングしたザ・シーグレープス、昨春漸く満を持してリリースされたフルレングスの正式デヴュー作に当たるもので、以前よりオムニバス形式企画のメタル作品への参加も然る事ながら、プレデヴューのミニアルバムで各方面から多大なる賛辞と高評価を得てきた彼女達が、持てる力と心血を注いで混迷に満ちた世に送り出しただけに、誇張抜きに気迫漲る驚愕なハイレベルの完成度を有しており、そんじょそこらのポッと出のジャパメタやレディースバンドとは雲泥の差を見せつけるであろう演奏技量とコンポーズ能力、スキルの高さから音楽的素養の幅広さを改めて窺い知る事が出来よう。
美麗でロマネスクなアートワークの秀逸さも総じて、セクシーヴィジュアルな見た目とは裏腹に、底知れぬポテンシャルとキャパシティに更なる自己進化 (深化)が予見出来そうな、まさしく序章そのものからプログレッシヴ・マインド全開である。
ヴォーカリストの力量含めメンバー各々のテクニックも申し分無いが、特にキーボーダーのワークとセンスには本当に頭の下がる思いですらある。
ラッシュ、クイーンズライク、オペス、そしてドリーム・シアター等といった大御所にも匹敵し、将来的に『2112』や『Operation: Mindcrime』ばりの大作主義やコンセプト作品をも手掛けていけそうな、そんな彼女達が歩み出した未知への第一歩に心から拍手を贈らねばなるまい。
Twitter The Shegrapes
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