幻想神秘音楽館

プログレッシヴ&ユーロ・ロックという名の夢幻の迷宮世界へようこそ…。暫し時を忘れ現実世界から離れて幻想と抒情の響宴をお楽しみ下さい。

Monthly Prog Notes -July-

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 7月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。

 先の「夢幻の楽師達」でも述べましたが、狂おしい様な昨今の猛酷暑に加えて、異常気象さながらのゲリラ雷雨に想定外な集中豪雨、そして新型コロナウイルスによる爆発的な第7波の感染拡大…等、振り返ってみればこの一ヶ月間は、我々人間にとって自然界からの過酷ともいえる試練を与えられているかの様な真夏の幕明けだったと思えてなりません (苦笑)。
 夏の気まぐれな空模様と猛酷暑、そしてコロナ禍の蔓延もいつかは引き潮の如く徐々に沈静化して、また再び心穏やかな秋が訪れる事を、今はただひたすら待ち侘びていたいそんな心境です。
 今回の「Monthly Prog Notes」も、そんな夏の暑さに負けない位の21世紀プログレッシヴを担うであろう新進気鋭な期待のニューカマー3バンドのラインナップが出揃いました。
 久々のアメリカン・プログレッシヴからは、かつて2009年と2012年に2枚の秀作をリリースし、その後音信不通が続いていたブリティッシュ・ヴィンテージをアメリカの地で脈々と継承したアストラから、ギタリストとキーボーダーによる発展的別動隊バンドで結成された“バース”のセンセーショナルなデヴュー作が降臨しました。
 アストラ時代の作風を感じさせながらも、より以上に70年代イズムを踏襲し決して冗長になる事無くコンパクトに聴き易くしっかりとまとめ上げ、初期クリムゾン或いは全盛期のVDGG、果てはグレイシャスやジョーンズィーといった通好みなブリティッシュ・アンダーグラウンドの気概すら感じさせる、まさしく21世紀スタイルとは全く真逆の王道を地で行く痛快無比な傑作に仕上がっています。
 イタリアからは往年のイタリアン・ロックの伝統を愛して止まないであろう20代のティーンエイジャー達が結成した“ウィルソン・プロジェクト”のデヴュー作が堂々のお目見えです。
 ワールドワイドな視野を意識したバンドネーミングとは裏腹に、イタリア語で歌う美麗で聡明な女性ヴォーカルをフロントに、敢えて何々風に似ているといった例えやら往年のバンドすらも思い浮かべない位、アートワークのイメージに違わぬオリジナリティーと独創性に富んだSFノベライズ風な世界観は21世紀イタリアンに於ける次世代の最右翼となるでしょう。
 北欧ノルウェーからは、プログレッシヴ・ジャズロックの王道と正統派を地で行くヴィンテージな感触と21世紀バンドならではの力強い手応えをも兼ね備えた“ソフト・フォグ”のデヴュー作が到着しました。
 北欧ジャズが持つ繊細さと抒情性を更にプログレッシヴ・サイドへ歩み寄せた、さながらテリエ・リピダルをも想起させるホット&クールさに加えて、エキサイティング且つスリリングな曲展開とメロディーラインは、時にイエスないしクリムゾン影響下が要所々々で散見出来、ロジャー・ディーン風のファンタスティックなアートワークのイメージと相まって、いつの間にか聴き手の胸と心をも鷲掴みする事必至でしょう。
 燃える様な炎天下の空の下、渓流を吹き渡る涼風の如き爽快感と川のせせらぎにも似た静謐さが織り成す真夏の饗宴を謳い奏でる楽師達の調べに、暫し暑さを忘れて非日常の時間と空間に遊離しまどろんで頂けたら幸いです…。

1.BIRTHBorn
  (from U.S.A)
  
 1.Born/2.Descending Us/3. For Yesterday/
 4.Cosmic Tears/5.Another Time/6.Long Way Down

 アールデコ調ながらも魔術と秘教めいたタロットカードをも連想させる、美しくも妖しくミステリアスなアートワークに思わず目を奪われてしまう…。
 70年代ブリティッシュ・ヴィンテージ系なヘヴィ・プログレッシヴをアメリカの地で脈々と継承し、かつて2009年と2012年に2枚の秀作をリリースし、大いに話題と評判を呼んだアストラ。
 2作品リリース以降音信不通が続いていたものの、長年の沈黙を破りアストラのギタリストとキーボーダーによる満を持しての別動隊的な新バンドとして結成されたバースの2022年衝撃的なデヴュー作。
 アートワークのイメージと寸分違わぬ、ミスティックで幻想的な…さながら70年代ブリティッシュ・ヘヴィプログレッシヴの発掘物だと紹介しても、老若男女のプログレッシヴリスナーの大半が信じて疑わないであろう。
 アストラ時代の名残を感じさせつつも、決して冗長にならずコンパクトに上手くまとめ上げ、全曲の収録時間が41分という70年代イズムを踏襲したスタイルを含め、あくまで70年代ブリティッシュの王道復古型を追求した、ある種の強いこだわりすら垣間見える至高の一枚であると言えるだろう。
 徹頭徹尾これでもかと言わんばかりにハモンドやメロトロンを多用し、初期クリムゾン始めVDGG、果てはグレイシャスやジョーンズィーのデヴュー期をも彷彿とさせる気概さと確信犯的な説得力の強さをも禁じ得ない。
 同国のカテドラルや90年代スウェーデンのアングラガルドに初めて触れた時と同じインパクトが全身を駆け巡る、恐ろしくも凄まじいサウンドエナジーである。
          

Facebook Birth
https://www.facebook.com/Birth.prog/

2.WILSON PROJECTIl Viaggio Da Farsi
  (from ITALY)
  
 1.Intro/2.Non Pensare Vai/3.Come Mi Vuoi/
 4.Complice Innocente/5.É stato Un Errore/
 6.Ingannando I Miei Sensi/7.Quando Cerchi Di Respirare/
 8.Se Solo Avessi Un'anima/9.Un Gioco/
 10.Il Viaggio Da farsi

 広大に拡がる幻想的な宇宙空間を背景に深遠なる森といった、プログレッシヴ&シンフォニックを愛して止まないリスナー諸氏なら大いに興味を惹かれる意匠であろう。
 北イタリアはビエモンテ州アックイ・テルメを拠点に活動する、20代とおぼしきティーンエイジャー達によって結成されたウィルソン・プロジェクトの、2022年記念すべきデヴュー作がここに到着した。
 ワールドワイドな視野をも意識したかの様なバンドネーミングであるが、パラレルワールドを創造する女性をテーマにした全曲とも美麗で聡明な女性ヴォーカリストがイタリア語で歌っており、それ以上に特筆すべきはソングライティングのセンスと楽曲スキルの素晴らしさに加えて、プロデュースとコンポーズ能力の高さには思わず舌を巻く思いですらある。
 イタリアのバンドでありながらも、70年代ヴィンテージ回帰型と呼ぶには程遠く、邪悪でダークなヘヴィプログレッシヴとは一切無縁で、尚且つ昨今のメロディック・シンフォ路線やポストロック寄りでもなければ極端に無国籍的なシンフォニックにも当たらない…早い話、何々風に近い音だとか往年のバンドの類似性すらも感じさせない、ネオ・プログレッシヴに類する作風でありながらも極めて純粋無垢な21世紀イタリアン・ロック来るべき次世代のホープにして最右翼に成り得るであろう、そんな未完の大器すら予感させる才気をも秘めている。
 …とは言いつつも、やはりオルガンの使い方やチェンバロ風なシンセの旋律にイタリアの伝統がしっかりと根付いている事についつい安堵感を覚えてしまう。
 ギタリストが抜けて現在は4人編成での活動に移行しているとの事だが、次回作に向けての今後の動向が大いに注視されるところである。
          

Facebook Wilson Project
https://www.facebook.com/wilsonproject

3.SOFT FFOGSoft Ffog
  (from NORWAY) 
  
 1.Chun Li/2.Zangief/3.Ken/4.Dhalsim

 収録されている全曲のタイトルを見て思わずブッ!と吹き出しそうになった (苦笑)。
 おいおい…これってカプコンの『ストリートファイターII』のゲームキャラの名前そのまんまじゃないかよ (汗)。
 ちゃんとカプコンに許可を得ているのかよ…などといった世界中のプログレッシヴ・リスナー下世話な総ツッコミなんぞ物ともせずに、あたかも我が道を邁進し続けるであろう強心臓の持ち主4人組による、北欧ノルウェー出身のプログレッシヴ・ヘヴィジャズロックの新鋭ソフト・フォグ堂々たるデヴュー作が届けられた。
 ロジャー・ディーンをモロに丸パクリというか極端にリスペクト且つ意識したであろう、プログレッシヴ・ファンの購買意欲をも駆り立てるファンタスティックなアートワークも然る事ながら肝心要のサウンド面にあっては、テリエ・リピダルばりのホット&クールなメロディーラインに加えエキサイティングでスリリングなギターが迫力満点且つ縦横無尽に駆け巡り、エレピをメインにシンセとストリングスが追随し、イエスやクリムゾン(特にラスト4曲目なんか)をも意識した曲想含め、ヘヴィネスとシンフォニックが同居し時折ECMな作風をも連想させる北欧ならではの涼感を湛えたクロスオーヴァーなリリシズムが色を添えるといった、一見不真面目そう(!?)に見えて実はしっかりと硬派なテクニカルさを打ち出しつつ真面目で真摯なプログレッシヴを創作している姿勢には大いに好感を抱いてしまう。
 CDインナーにロジャー・ディーンのシンボルマークともいえる飛行船がちゃっかりと描かれている辺りは、まあ彼等なりのプログレ愛にも似た御愛嬌というか洒落として受け止めて差し支えあるまい。
 兎にも角にも北欧系ジャズロックから久々に良質な作品と出会えた事に、粋な遊び心を持った彼等に心から感謝の念を捧げようと思う。
          

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