Monthly Prog Notes -September-
9月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
本格的に深まりつつある芸術の秋…プログレッシヴの秋到来に相応しく、今回はハンガリー、イギリス、そしてドイツから、21世紀プログレッシヴの次世代に華を添えるべく、長年の音楽経験値を物語るであろう、かつてのベテランアーティストたる系譜と流れを汲んだ、気鋭にして気概のニューカマー3バンドが出揃いました。
東欧随一のロック大国ハンガリーから、まさしく帰還を待ち望んでいたと言わんばかりな猛者が21世紀プログレッシヴにカムバックしました。
80年代に鮮烈なデヴューを飾って一躍ハンガリアン・プログレッシヴの底知れぬ実力を見せ付けたイーストから、バンド解散以降長年の沈黙を破ってオリジナル・キーボーダーGéza Pálvólgyi主導の許で結成された“アイランド”に拍手喝采です。
イースト時代の名残を感じさせつつも、クロスオーヴァーでジャズィーな側面をも垣間見せ、東欧らしいエキゾティックさとメランコリックさが同居した唯一無比で孤高なる音楽世界観は本デヴュー作でも健在で、改めて年季の強さと凄みが要所々々で垣間見えて、ベテランクラスたる匠の域 (粋) に達した珠玉の一枚に仕上がってます。
ブリティッシュ・ネオプログレッシヴ系からも期待の新星“ラウンド・ウィンドウ”のデヴューアルバムが到着しました。
如何にもといった感の意匠に思わず目を奪われますが、メロディック・シンフォに類する作風でありながらも、イギリス独特の翳りと抒情美がそこはかとなくちりばめられており、封入されている各曲のイメージに沿った印象的なフォトグラフが否応も無しに、聴き手の脳裏に鮮烈なヴィジュアルを投影する事必至でしょう。
久々のドイツからは、こちらも往年のジャーマン系の流れを踏襲したシュールにコラージュされたアートワークが目を惹く“ワイアード・ウェイズ”の、満を持してのデヴュー作が登場。
当初スタジオ・ミュージシャンの集合体として結成された4人編成の布陣ながらも、かのシュテルン・コンボ・マイセンのメンバー始め総勢40名もの多国籍ミュージシャンのバックアップを得て創作された、ジャーマン&ブリティッシュテイストな70s'ヴィンテージと重厚感満載の正統派シンフォニック絵巻が縦横無尽に繰り広げられています。
秋月が照らし出す空の下、夜長のお供に浪漫と詩情の思いを馳せながら、孤高で崇高なる楽師達の謳い奏でる響宴に、暫し時と現実を忘れて御満悦頂けたら幸いです…。
1.ILAND/A Sziget
(from HUNGARY)


1.Kék Gyémánt/2.Zarándok - Instrumental/
3.Tárd Ki Az Ajtód/4.De Mégis Élunk/
5.Úton Haza/6.A Sziget/7.Párbaj/
8.Elkesett Szavak/9.Coda
一時代を飾った巨人が再び目を覚ました…そんな一文すらも思い起こさせる位に、インパクト大のベテランにしてニューカマーが21世紀プログレッシヴシーンに帰って来た。
80年代初頭にセンセーショナルなデヴューを飾り、初期の2大名作『Játékok』と『Hüség』で一躍大きな伝説と足跡を残し、東欧ハンガリーのシーンに新たな息吹きをもたらしたイーストから、オリジナルメンバーでキーボーダーのGéza Pálvólgyi主導による新生バンド…その名もアイランドのカムバックなデヴュー作が届けられた。
バンドのネーミングからしてスイスの伝説バンドのアイランド (ISLAND) をも連想させるが、こちらはスペルにSの無いILANDではあるものの、アートワークのインパクトではこちらも負けてはいない。
かつての変拍子と起伏の激しい荘厳でシンフォニック然とした作風とは打って変わって、後期のフロイドにも似通ったエモーショナルで幻惑的な泣きの旋律とリリシズムを湛えながらも、東欧らしいメランコリックでエキゾティックな佇まいが醸し出され、クロスオーヴァー&ジャズィーで宵闇迫る様なムーディーなヴィジュアル感が加味されて、かつてのイースト時代から更に成熟し洗練された年季の強みというかベテランたる気概と風格が音楽性にも表れており、聴く者の脳裏に寄せては返す波の如くリフレインされ、あたかもそれが静かに厳かに胸を打ち感動を呼び起こす事必至であろう。
おそらく初回プレス分のみの特典かもしれないが、80年代半ば以降のイースト時代の曲が収録されたライヴの模様が収録されたディスク2がセットになった2枚組というヴォリューム感も嬉しい限りである。
Facebook Iland
2.THE ROUND WINDOW/The Round Window
(from U.K)


1.The Window/2.Take My Hand/3.Among The Clouds/
4.Victory/5.Out Of Time/6.Nobody Home/
7.Avalon/8.Another Chance
2018年にプログレッシヴ・デュオスタイルで結成され、その後度重なるメンバーの集散を経て5人編成という基本スタイルの布陣で、21世紀ブリティッシュ・ネオプログレッシヴの次世代を担うべく、今後更に注視される逸材として上り詰めていくであろうラウンド・ウィンドウ2022年のデヴュー作が遂にめでたくお目見えと相成った。
印象的でもう如何にもといった感のアートワークに思わず惹かれるが、音楽性自体も冗長気味で長ったらしいポッと出の凡庸なメロディック・シンフォ系とは一線を画す趣向と作風で構成されており、往年期の正統派ブリティッシュ・プログレッシヴの流れを汲む様なナンバーから、シンフォニック&ポップス、リリシズム溢れるフォーキーな作風に至るまで、徹頭徹尾に英国然としたたおやかでドラマティックなイマジナリーを湛えた、仄明るい光明と陰影の翳りが織り成すメロディーラインとハーモニーが絶妙な音世界と空気感を醸し出している。
デジタル系キーボードをかなり多用しているのかもしれないが、それでもオーケストレイションを含めメロトロンからハモンド、果てはフェンダーローズにクラヴィネットの残響を大切にした音作りには感動を覚えると同時に好感度も爆上がりで、喩え方としては決して妥当とは言い難いが…70年代の伝説的かのケストレルを21世紀にもし復活させたら、多分こんなセンシティヴでスタイリッシュな作風になるのではなかろうか…。
いずれにせよメンバー各々の演奏並び曲作りの上手さに加え、プログレッシヴ嗜好(指向)の志とスキルの高さこそが彼等の身上なのかもしれない。
モストリー・オータムの女性フルート奏者が1曲のみゲスト参加しているアコースティックな冒頭の4曲目なんて、改めてイギリスの風と空気感が脳裏を駆け巡って、もはや感動以外の何物でも無い。
Facebook The Round Window
3.WIRED WAYS/Wired Ways
(from GERMANY)


1.Ticket Tally Man/2.Peacock On The Highway/
3.Lazy Daisy/4.Hànôi Tramway/5.Mosquitoes/
6.Perpetuum Mobile/7.When The Doors Are Closed/
8.Another Sad Man/9.Planet 9
久方ぶりのドイツから、いやはや途轍もなく…否!とんでもなく超絶怒涛の70年代ヴィンテージ全開なカラーとハイテンションと熱気を帯びた悶絶必至な超新星ワイアード・ウェイズがここに降臨した。
今夏開催のプログ・フェスにて共演したスティーヴ・ハケットやコロシアムからの称賛を受け、一躍にして瞬く間に注目の的となった彼等のセンセーショナルでアグレッシヴな2022年デヴュー作は、冒頭初っ端からビートルズへのリスペクトかオマージュすら匂わせるブラス入りの軽快でハッピーなナンバー始め、異国情緒漂うエスニック香る4曲目、ミスティックでジェネシスチックな5曲目、東洋的でもありアラビックな雰囲気をも加味した『ディシプリン』期のクリムゾンをも連想させるナンバー…etc、etc、etc、兎にも角にもプログレッシヴを愛して止まない、プログレッシヴ大好きな聴衆の為のオンパレードと言っても過言ではあるまい。
多種多様多才な変幻自在で高度な演奏力で聴き手に全く飽きすらも抱かせない、良い意味で実に計算高いしたたかさこそが彼等なりのリップサービスでもありセールスポイントなのだろう。
4人編成から成るスタジオミュージシャンの集合体から、徐々に人伝で輪(和)が広がってシュテルン・コンボ・マイセンのキーボード、ベースが参加するばかりか、気が付いたらいつの間にか数えて総勢40名ものゲストミュージシャンが集ってプログレッシヴを創り奏でているという、さながら夢の様な至福のひと時がぎゅっと濃密に凝縮され、映画のワンシーンをも彷彿とさせる効果音の配し方も何とも実に心憎いトータル43分強のプログレッシヴ絵巻である。
どうか騙されたつもりで是非貴方(貴女)のお部屋のライブラリーに加えて頂きたい…そんな充実感に満ち溢れた贅沢極まりない出来栄えの素敵な一枚である!
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