Monthly Prog Notes -November-
11月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
激動の一年だった2022年も残すところあと一ヶ月…。
毎年末恒例の“Progressive Award”がいよいよ間近に迫ってきた折、今回はその前哨戦という意味合いをも踏まえた形で、2022年プログレッシヴ10選のエントリーにノミネートされるであろう強力3作品のラインナップ揃い踏みです。
フランスからは2016年その卓越した高度な音楽性と完成度のデヴュー作を携えて、素人臭さが全く皆無な超強力ニューカマーとして一躍脚光を浴びる事となった“オーディオM”の、実に6年振りとなる文字通り満を持しての待望の新譜2nd。
今作のテーマは日本が世界に誇るKing Of Monster=ゴジラをモチーフに、核兵器の脅威と悲劇、古の神話云々とが織り成す、深遠で且つ荘厳、果ては文明批判の韻をも踏んだ意味深で心を打つトータルアルバム形式となってます。
ジェネシス、クリムゾン、イエスからの影響を窺わせつつ、徹頭徹尾メロトロンの波と壁に覆いつくされた圧倒的なモンスターシンフォニック譚はプログレッシヴ・ファンのみならず特撮映画ファンの心をも鷲掴みにする事必至でしょう。
イタリアからは大御所アーティストの実に4年振りの新譜が到着。
1972年のデヴューから数え、一時的な解散、そして21世紀代に於ける二度の再結成を経て、今もなお根強い絶大なる支持を得ている“レアーレ・アカデミア・ディ・ムジカ”の通算7作目は、ややもすると一見シティポップス調をも連想させるアートワークながらも、内容的には前作での流れを汲んだ正統派イタリアン・ロックの醍醐味が存分に堪能出来る、大ベテランならではの絶妙な技量が冴え渡る秀作に仕上がってます。
アメリカからも素敵な便り…Billy Sherwood始めJon Davisonの現イエスのメンバー始め、サーカのJimmy Haunによる、今やイエス・ファミリーツリーの現在(いま)を生きる先鋒に位置するであろう“アーク・オブ・ライフ”の新譜2ndが、昨年の堂々たるデヴューにも拘らず早くも登場しました。
イエスそしてサーカ譲りの構築的でタイトなサウンドワークに、Billy Sherwood自らが思い描くサウンドカラーが加味された、イエス・チルドレン次世代の音が垣間見れる充実の一枚と言えるでしょう。
枯葉舞い散る感傷的な晩秋から、日に々々冬の足音が近付きつつある雪と霙混じりの寒々とした光景が目に浮かぶ今日この頃、暖かい部屋で去り行く2022年に思いを馳せながら、感動と夢想を紡ぎ謳い奏でる楽師達の旋律に、心穏やかに暫し酔いしれて頂けたらと思います…。
1.AUDIO'M/Godzilla
(from FRANCE)


1.Little Boy/2.Gaïa/3.The Wake/
4.The Sacred Tree/5.Lift-Off/6.Hiroshima/
7.Vasuki/8.The Journey/
9.やっとおちついた (Yatto Ochitsuita)/10.I'm Ready
その卓越した音楽性と秀逸なるコンポーズ能力に加えて、素人臭さが全く皆無な…文字通り一朝一夕では為し得ない演奏技量の巧みさでセンセーショナルなデヴューを飾ってから早6年、フレンチ・シンフォニック久々の期待の新星と称賛されていたオーディオMが、満を持しての期待の2nd新譜を引っ提げて再び我々の前に帰って来た。
それも今作のテーマが、日本が世界に誇るKing Of Monster=ゴジラというのだから、胸躍らせる様な期待感は更に高まるのは無理も無い。
さながら日処国の荒ぶる神=呉爾羅(ゴジラ)が、地球と核兵器と共に胎児の様に眠っているという、何とも実に意味深なアートワークが雄弁に物語っているのかの如く、原爆Little Boyに広島といったキーワードを要所々々にちりばめながら、科学文明への警鐘、核兵器の愚かしさを高らかに謳い奏でる、21世紀プログレッシヴ史上最高の完成度を誇る名作へと上り詰めるそんな予感すら抱かせる。
徹頭徹尾に重厚且つ荘厳な世界観を醸し出しているメロトロンにハモンド、ジェネシス始めクリムゾン、イエスといったプログレッシヴ・レジェンド達からの影響下を窺わせる70年代ヴィンテージ全開のトータル10章のパートに及ぶ43分1曲のみという壮大なトータル作品となっており、本作品は彼等が提唱する“GAIA”3部作の内の第1部に当たるものである。
フレンチ・ロックお得意のロックテアトルな要素一切無しでありながらも、強いて挙げるなら伝説クラスのサンドローズやピュルサーの『Halloween』のテンションにも匹敵する、文字通りお世辞抜きに必聴必至のマスターピースとなるであろう。
天国の田中友幸氏始め…円谷英二特技監督、本多猪四郎監督、音楽家の伊福部昭氏、そして今年逝去された主演の宝田明氏の御霊に捧げたくなる様な、まさに反核精神と神話世界を臆する事無く高らかに謳い上げた魂と渾身の一枚である。

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2.REALE ACCADEMIA DI MUSICA
/Lame Di Luce
(from ITALY)


1.Onde Di Sabbia/2.Ascesa Al Fuji/
3.Due Pietre Preziose Birmane/4.Lame Di Luce/
5.Si Parlerà/6.Una Ferita Da Disinfettare/
7.Ore Lente/8.Incontri/
9.Ossessione*/10.Il Cavaliere Del Cigno (L'addio)*
(*Bonus Tracks)
嗚呼…何て心洗われる崇高で素敵な一枚なんだろう、自分自身そんな言葉が無意識に出てくる位、本作品の素晴らしさに思わず心奪われてしまう。
70年代イタリアン・レジェンドからの復活バンドに於いて、よもやこんな落涙必至な感動作が再び聴けるとは夢にも思わなかったのが正直なところである。
1972年のデヴュー作で聴かれた純朴で牧歌的な雰囲気を湛えたレアーレ・アカデミア・ディ・ムジカが、21世紀の再々復活で改めて原点回帰に立ち返ったかの様な、瑞々しくて大らかで繊細な詩情をここまで発露させ自己進化 (深化) を遂げようとは…。
70年代の気概と21世紀らしい音楽スタイルとが違和感無く融和し、時代と世紀をも超越したプログレッシヴで純粋無垢な極上品質のイタリアン・ポップスへと昇華した、極めて純音楽とは何たるかを世に問うた秀逸なる屈指の一枚と言っても過言ではあるまい。
その極端に時代相応な感すら与えるであろう、一見してシティポップスへの転換と見まがう様なアートワークとは裏腹に、高純度100%の脈々たる正統派イタリアン・ロックの系譜は今なお生き続けているという事に一種の安堵にも似た微笑ましさすら禁じ得ない。
いずれにせよ、時代と世紀を生き長らえてきた彼等の高邁で清廉なる調べに、兎にも角にも今暫くは身を委ねていたいのが正直なところである。
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3.ARC OF LIFE/Don't Look Down
(from U.S.A)


1.Real Time World/2.Don't Look Down/
3.All Things Considered/4.Colors Come Alive/
5.Let Live/6.Arc Of Life
先般の久々の来日公演で改めて現役第一線たる実力とその健在ぶりを聴衆に示したイエスの感動と興奮冷めやらぬまま、イエス・ファミリーツリーの最前線で故クリス・スクワイアばりの師匠譲りでイエス・スピリッツを継承・牽引しているBilly Sherwoodの精力的な活躍ぶりには目を瞠るものがある。
イエス、サーカ、そして自身の活動と多岐に亘るさ中、Billy自身更なる自己進化と高みを目指して結成したアーク・オブ・ライフの、昨年の鳴り物入りデヴューから短いスパンにも拘らずリリースされた2022年の新譜2ndは、さしづめイエスとサーカからの良いとこ取りといった感は無きにしも非ずであるが、それ以上にモダンでタイトな構築性はもはやオリジナルすらも凌駕していると言っても異論はあるまい。
Billy始めヴォーカルに同じくイエスも兼ねるJon Davison、ドラマーには故アラン・ホワイトの後釜としてイエスに加入したJay Schellen、そしてサーカからギタリストのJimmy Haun、IN CONTINUUMのメンバーでもありソロ活動も併行しているDave Kerznerをキーボードに擁した、まさにイエス愛を自認し、イエスサウンドの細部まで熟知した精鋭達5人による、オリジナルに携わった先人達の意思を次の世代へと繋ぐべく、さながら精神と伝承のバトンリレーよろしく一種の決意表明にも似た気概と覚悟すら感じられる。
ラスト17分越えの大曲に、イエスの「危機」或いは「錯乱の扉」ばりの名残が随所に窺い知れて、何とも感慨深い思いに捉われてしまう…のは私の思い過ごしであろうか。
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