Monthly Prog Notes -March-
3月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
桜前線の北上と麗らかな春爛漫の陽気に伴われ、人生の新たな門出…出会いと別れの悲喜交々が織り成す今日この頃、新たな年度変わりを目の当たりに身も心も引き締めて再スタートを切る方々も多い事でしょう…。
今回お届けするラインナップも、そんな時節柄と相まって長年の熟考と経験…様々な試行錯誤と紆余曲折を経て世に躍り出たベテラン級の実力派が出揃いました。
久々のスペインからは2007年の3rdリリース以降、音信が途絶えていたオムニの実に16年振りの4作目の新譜が到着しました。
長年のブランクをも感じさせない、今までの思いの丈がぎっしりと詰め込まれたであろう2枚組というヴォリューム大作も然る事ながら、キャメル系スパニッシュなリリシズムに加え、カイ、ゴティック、果てはイトイスといったアンダルシアの陽光と風をも彷彿とさせる心打つイマジナリーは今作でも健在です。
イタリアからは70年代に結成されながらも、作品リリースデヴューの機会にも恵まれず、90年代にカセットオンリーでしか音源が遺せなかったコルモラノの、遂に念願と待望の再デヴュー作が到着しました。
アレアとバンコの2大巨頭を始め70年代イタリアン・ヴィンテージの系譜と流れを踏襲しつつ、21世紀に相応しいアップ・トゥ・デイトされたスタイルへと更なる進化を遂げた、円熟味と革新とが互いにせめぎ合う決定版ともいえる力作に仕上がってます。
北欧フィンランドからは、実に10年ぶりの2ndリリースと相成ったアート・デコが私達の前に久々に帰って来ました。
北欧の森と湖を想起させる壮麗なるイマージュは今作でも健在で、神話の世界を覗いたかの如き仄暗いダークな佇まいに静謐な抒情性が溶け合った唯一無比な世界観も然ることながら、近年イギリスのプログレッシヴ・ロック専門ラジオでオンエアされ大いに話題を呼んだ新曲も収録され、まさしく必聴必至の傑作になる事間違いありません!
春霞と桜花舞い散るのどかな陽だまりに身を委ねながら、暫しの間だけ現世から遊離し…夢想と詩情の狭間で謳い奏でる楽師達の刹那の響宴に耳を傾けて頂けたら幸いです。
1.OMNI/Crónicas Del Viento
(from SPAIN)


Disk 1
1.Into (Levante en Calma)/2.Crónicas Del Viento/
3.La Espiral/4.Los Recuerdos Del Unicornio/
5.Sa Foradada/6.Dos Orillas/7.El Arbol Y La Lluvia/
8.Danza De Los Vientos
Disk 2
9.Imad El Marino/10.Cruz Del Picacho/
11.Primera Luz Del Amanecer/12.Terral/
13.Tormenta De Arena/14.Tras El Puente (Bonus Track)
中米エルサルバドルの代表格でもあるオブニとちょくちょくネーミングが混同されがちであるが、こちらはスペインのベテランクラスでもあるオムニで、2023年の今作は実に16年ぶりとなる2枚組大盤振る舞いなヴォリュームの大作主義で、徹頭徹尾キャメルの系譜を汲んだ泣きのギターとキーボードがエモーショナルなリリシズムを構築しており、同国の抒情派の誉れでもあったカイ、ゴティック、果てはイトイスといった、アンダルシア地方の情熱と風を感じさせる、冒頭1曲目から目の覚めるような鮮烈さと壮麗さを纏った誰しもが思い描くであろう正統派スパニッシュ・ロックの旋律が、21世紀という時代相応にアップ・トゥ・デイトされ、激情と知性が背中合わせに隣り合った、変に押し付けがましい様な暑苦しさやフラメンコ臭が皆無な、紛れも無く現在進行形型のシンフォニーに転化された良質な好作品と言えるだろう。
2000年のデヴュー作『Tras El Puente』以降、『El Vals de los Duendes』(02年) 、『Sólo Fue un Sueño』(07年) とバンドを牽引してきたギタリスト兼リーダーMichael Starry (本作品ではキーボードも兼ねる)を中心に 、前作の3rdで一時的にバンドを離れていたリズムギターのSalvador Vélezが復帰し、それ以外のメンバーが全て一新され、数名ものキーボード奏者、サックス&フルート…等をゲストに迎え、トータル2時間近い無限(夢幻)の回廊にも似た音の迷宮に、リスナーの誰しもがいつの間にか彼等の音の術中に魅了されてしまうこと必至であろう。
プログレッシヴのスキルを含めコンポーズ能力の高さ、演奏技量から録音クオリティー、アートワークに至るまで、どれ一つも無駄の無い完全無欠な至高級の傑作、彼等の16年間の沈黙は決して無駄では無かったことを威風堂々物語っているかの様ですらある。
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2.CORMORANO/Obliquizioni d' Autunno
(from ITALY)


1.Obliquizione/2.Cormorano/3.Nuovi Colori/
4.25 Aprile/5.Asia/6.Festa Di Settembre/
7.Il Rock Dei Sogni/8.Nei Tuoi Occhi/9.Disarmoritmo/
10.Pugni Chiusi
冒頭のっけからデメトリオとジャコモおじさんの声帯模写を思わせる独り芝居がかったイントロダクションに驚愕ですらある。
文字通り70年代の大御所アレアやバンコから多大なる影響を受けたであろうコルモラノ満を持しての待望のデヴュー作が遂に到着した。
そもそも彼等自身の結成が1975年で、地道にギグを積み重ねて腕を磨いてきたものの、悲しいかな結成当時は運とツキに恵まれず作品を遺すこと無く、それ以降は集散を繰り返しイタリアン・ロックリバイヴァル真っ只中の90年代に漸くカセットオンリーの作品を人知れずリリースしただけという、実力派バンドでありながらもチャンスとタイミングを逸していた遅咲きのニューカマーであると言っても差異はあるまい。
バンドのイニシアティヴを握るヴォーカリストRaffaello Regoliを筆頭とする3人のオリジナルメンバーに、新たなメンバー3名を迎えて製作された再デヴューに当たる本作品、デメトリオ・リスペクトな歌唱法にバンコの構築的な音楽性とがコンバインしたといえば当たらずも遠からずといったところであろうか。
…にしても、時流に抗い臆する事無く巌の如き不退転な姿勢と、その真摯な信念と創作意欲には改めて頭の下がる思いですらあり、ただ単に影響を受けました云々のレベルすらも遥かに凌駕した、並々ならぬアレアとバンコ敬愛の念と魂が端々から滲み出ており、彼等の思いの丈がこれでもかと言わんばかりにぎっしりと詰め込まれた、弛まぬ底力とプライドが結実した理想形と言えるだろう。
只々、絶句である。
余談ながらもヴォーカリストのRaffaello RegoliのFacebookはあれど、バンドオンリーのFBページが無いのが残念!
3.ART DECO/Turhat Tarinat
(from FINLAND)


1.Alfa Centauri/2.Vihamielinen Viima/
3.Kotiin Palatessa/4.Kauneus On Hetken Varas/
5.Turhat Tarinat/6.Kallat Ja Kynttilät/
7.Elegia
かのマラディと共に21世紀フィンランド・ヴィンテージの担い手となった感すら窺える、もはや新鋭といった言葉すら不要となったであろうアート・デコの2023年の新譜2nd。
2013年のデヴュー作から数えて実に10年ぶりの新譜リリースと相成ったが、北欧ならではのミステリアスな佇まい…禁断の神話世界を覗き見るかの様なダークな雰囲気をも醸し出し、森と湖とオーロラが織り成す神秘な心象風景、フィンランドの風土ならではのエキゾティックな佇まいが、彼等の創作する漆黒の闇夜にも似たヴィンテージ色豊かなサウンドに違和感無くマッチしている。
ミスティックな印象を与える女性ヴォーカリストにツインギターを擁する6人編成が紡ぎ出す、個性豊かで孤高なる音世界からは、あきらかに往年のウィグワム始めタサヴァラン・プレジデンティからの影響を匂わせており、時流の波といったトレンドとは真逆で無縁なこだわりというか一筋縄ではいかない潔さと決意表明すら感じ取れる。
まあ…プログレッシヴの命はジャケットアートというが、その点を差し引いても彼等の音楽性が決して劣ること無く、むしろそれを逆手に取った意外性が作品を際立たせているのかもしれない。
…でも、やっぱりジャケットアートは必要不可欠であると思うし、アイディアが湧かなかったのか?或いは…ただ単に時間が無かったのかは定かでは無いが、いずれにせよ次回作に期待を繋げたいところである。
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