Monthly Prog Notes -September-
9月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
本格的なプログレッシヴ・ロックの秋到来に相応しく、今回も各々のバンドカラーと音楽性を物語る個性的な3組のラインナップが出揃いました。
活気溢れる21世紀イタリアン・ロックからまたしても次世代を牽引するであろう強力なニューカマー“スファラットンズ”がお目見えとなりました。
70年代に結成するも当時作品をリリースする事も無く人知れず解散したものの、近年再結成され漸く陽の目を見る事となった彼等の今年リリースされたばかりの2nd新譜(同時に2015年のデヴューアルバムも到着)は、かのPFMや伝説のロカンダ・デッレ・ファーテばりのイタリアン・ロック特有のパッションとリリシズムを湛えたサウンドワークとフルートの響きに、聴き手の脳裏に感動の波が押し寄せてくる事必至といえるでしょう。
昨年鮮烈で衝撃的なデヴューを飾った、北欧と北米のメンバーによる混成チームの“プロポーションズ”が、前デヴュー作以降の創作意欲が止まる事無くスパンを置かずに短期間で仕上げた新譜2ndは、半ば突貫工事・やっつけ仕事といった危惧を抱かせながらも、そんな余計な懸念すらも一蹴するかの如くデヴュー作を遥かに上回るハイクオリティーなシンフォニック・ジャズロックに仕上がっています。
久々のドイツからは、21世紀の今もなお70年代ジャーマン・ハードロックの根強い人気と支持を物語るかの様な、かのフランピーばりのオルガンをフィーチャーしたヴィンテージサウンドを踏襲した期待の新鋭“ジュレス・バンド”の堂々たるデヴュー作が到着しました。
ハモンドを力強くなお且つ繊細で流麗に弾きこなしヴォーカルも兼ねる女性キーボーダーの個性が光る、次世代ジャーマン期待の逸材登場に溜飲の下がる思いになる事でしょう。
深まる秋の夜長に一人しみじみと酒杯を傾けながら、暫し抒情と夢想の旋律に耽りロマンティックでファンタジックな時間をお過ごし下さい。
1.SFARATTHONS/Appunti Di Viaggio
(from ITALY)


1.Appunti Di Viaggio/2.Vela/3.Cielo Nero/
4.Notte/5.Your War, Our War/6.Ne Journe, N'Anne/
7.With All The Strength Of My Voice/8.Vaije/9.Trust
バンドのルーツは紛れも無く70年代に結成した系統ながらも、作品をリリースする事無く解散を余儀なくされ表舞台から去って行った数多くの無名バンドと同様、彼等スファラットンズも御他聞に漏れず、若い時分のバンド解散という辛酸と苦渋を舐めさせられた後、21世紀の今日に於いて年輪と実力を積み重ね、漸く満を持しての再結成とアルバムリリースまでに至った次第であるが、やはり昨今の若年層ニューカマーとはまた違った、良い意味でベテランの域とも言える熟年世代ならではの古き良きメロディーライン…強いて挙げるなら往年のPFMないしロカンダ・デッレ・ファーテ譲りの牧歌的でリリシズム溢れる70年代イタリアン・ロックの伝統と王道を踏襲し、静と動、柔と剛の曲想をバランス良く配した、味わい深くて情感豊かな音世界を醸し出していると言っても過言ではあるまい。
2015年リリースのデヴュー作『La Bestia Umana』での初々しさも然る事ながら、今年リリースされたばかりの新譜2ndの本作品でも見受けられたが、ゴリゴリのヴィンテージ系サウンドを追求するまでもなく、フルートとバックコーラス総じた彼等のサウンドワーク並びアートの意匠から滲み出ている、イタリア人ならではの気風とアイデンティティーが見事に脈々と受け継がれた極めて純粋なる21世紀のイタリアンの音に他ならない。
大判サイズの絵本を思わせる様なブックレットを模したCDパッケージも、70年代イタリアン・ロックで顕著に見受けられた変形ジャケットにも相通じるギミックらしさが感じられて好感すら抱かせる、まさしく愛ある必聴作と言えるだろう。
Facebook Sfaratthons
2.PROPORTIONS/Visions From Distant Past
(from MULTI-NATIONAL<SWEDEN・CANADA・U.S.A>)


1.Temporal Induction/2.Double Barrel/
3.Seagull's Call/4.Sticks In The Head/
5.Floorcare/6.Colors Of Light/7.Open Door/
8.Telemetry Drizzle/9.Grift/10.Splendid Illusion/
11.Pangaea/12.Temporal Finale
昨年の鮮烈にして神憑りにも似たハイクオリティーな完成度でデヴューを飾った、北欧と北米のミュージシャン達による集合体プロポーションズが、短期間という僅かなスパンであるにも拘らず…半ば突貫工事或いはやっつけ仕事すら思わせるハイペースでリリースした待望の新作2ndであるが、リスナー諸氏含めた周囲の危惧や心配なんてどこ吹く風と言わんばかり、今作もデヴューと同様スペイシーで且つサイケ風にどぎつい極彩色のアートワーク(さながら地球を見つめる異星人グレイの眼差しといったところか…)に彩られながらも、中身はしっかりとシンフォニック&ジャズロックなスタイルで聴く者を飽きさせない様々なヴァリエーションと曲毎に違った顔と表情を垣間見せてくれる。
タンジェリン風なオープニングからフロイド調に転じたかと思いきや、かのハッピー・ザ・マンを彷彿させたり、初期のハケットを思わせる風合いを感じさせたりと変幻自在に曲展開する高度な音楽性に加えて、メンバー同士がオンラインやSNSといったネット上でアイディアや楽曲データをやり取りしつつ完成させたという事にもはや驚愕すら禁じ得ない。
まさしく時代は変わったと思いつつも、決して薄っぺらではない正真正銘の心(ハート)と血の通った重厚で硬派なプログレッシヴたる真髄が窺い知れよう。
Facebook Proportions
3.THE JULES BAND/Little Things
(from GERMANY)


1.Little Things/2.Good Times/
3.Don't grow Up It's A trap/4.Dancin' Would Be Fine/
5.Rollercoaster/6.Steady Nerves/7.Knock On Wood/
8.Keep In Mind/9.Hold On Tight/10.Dear Disease
21世紀の現在もなお70'sジャーマン・ハードロック人気の根強さを物語るであろう、驚愕にして必聴のニューカマーがここに登場した。
ハモンド、エレピを駆使しメインヴォーカルも兼ねるJulia Fischer嬢を中心とするジュレス・バンドの本作品は2018年のデヴュー作に当たり、満を持しての日本上陸となった次第である。
Julia嬢のブルーズィーで70年代特有の時代感と空気を纏ったソウルフルな歌唱力とオルガンワークにギターとリズム隊が絡み、曲によってはバックコーラスが参加するといった作風で、時流の波やら昨今のトレンドとは凡そ無縁とおぼしきヴィンテージなサウンドルーツを遡れば…やはりそこはジャーマン・オルガンハードの伝説的存在でもあるフランピーという源流に辿り着くであろう。
同じフランピー影響下の同国の新鋭リキッド・オービットとほぼ互角の良い勝負をしているが、前者との決定的な違いはサイケデリックでトリップな要素が皆無で、あくまで往年のZEPにも相通ずるパワフルでストレートに“R&B”と“ロック”なカラーを全面に押し出しているところだろうか。
兎にも角にも全曲聴き処満載で、レコーディング風景のフォトグラフをそのままアートワークに起用したりといった心憎い懐かしさすらも呼び起こしてくれるのも実に嬉しい限りである。
ビール片手に小さなライヴホールで、生のステージで接してみたくなるような臨場感と醍醐味すら体感したくなる、そんなささやかな魅力すら秘めている新たなる曲者的逸材登場に心から拍手を贈らんばかりである。
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