Monthly Prog Notes -December-
2019年、今年最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
今回は2019年の終わりに相応しい、まさしく秀逸で珠玉なるラインナップ3作品が出揃いました。
先ずは旧チェコスロバキアの共産圏時代、その一時代を牽引したと言っても過言では無いスロバキアの大御所“フェルマータ”がバンド名義としては実に14年ぶりの新譜リリースと相成りました。
東欧独特のエキゾチックなイマージュとエモーショナルなリリシズムを湛えた、21世紀相応のソリッドにして硬派で流麗なシンフォニック・ジャズロックは、黄金期に負けず劣らずなダイナミズムが聴く者の心を必ず鷲掴みにする事必至です。
バルト三国随一にして最大のロック大国エストニアから、3年前のセンセーショナルなデヴュー作が全世界で大いなる話題を呼んだ“ポージャ・コーン”待望の2ndが満を持して到着しました。
漫画タッチながらも何やらヤバそうで深読み出来そうな意匠に包まれた本作品は、往年の伝説の大御所イン・スペのリマスター&リイシューに呼応する形で、バンドとブラスセクション、ストリングアンサンブル、コーラス隊との共作による新曲+イン・スペのカヴァーを取り挙げた意欲的な内容に仕上がっています。
そしてイタリアからも久々に心躍り胸が熱くなる様な期待の新鋭“イ・モディウム”の素晴らしいデヴュー作が届けられました。
70年代イタリアンのビッグネーム…PFM始めバンコ、オルメ、アレア影響下のイディオムとシンパシーを脈々と継承した、これぞ王道イタリアンの音を21世紀に甦らせたと言わんばかりな気概と作風に、リスペクト云々といったカテゴリーをも超越した敬意と愛溢れる最良の一枚と言えるでしょう。
去りゆく2019年に様々な思いを馳せ、来るべき2020年に新たな期待と希望を寄せながら、一年間の終焉を飾るであろう荘厳なる旋律の調べに、ほんのひと時でも酔いしれて頂けたらと思います。
そして…近日発表公開される“2019年 プログレッシヴ・アワード”へと繋がる布石或いはイントロダクションとして捉えて頂けたら幸いです。
年末の最後まで、どうか乞う御期待下さい!
1.FERMATA/Blumental Blues
(from SLOVAKIA)


1.Booze Night/2.Ladies Of Avion/3.Blumental Blues/
4.The Pigeons Of St.Florian/5.Last Dance At The Firsnal Place/
6.The Copper Cock/7.Hommage A Marian/8.Stupid Morning/
9.The Breakfast At Stein/10.First Morning Tram
バンド結成当初からのオリジナルギタリストFrantisek Griglák主導による2005年の再結成復帰作(半ばFrantisekのソロ・プロジェクトに近い形ではあるが)から実に14年ぶりの新譜リリースとなる、まさしくこれぞ実質上フェルマータ名義の再出発作と捉えても異論はあるまい。
今回オリジナルメンバーの初代キーボーダーTomás Berkaとの再会・合流を機に再々結成による復活劇を経て新たな若手のリズム隊を迎えて製作された本作品、70年代の名作群に負けず劣らずなダイナミズムと迫力が全曲の端々で満ち溢れており、クロスオーヴァー、ジャズロック、シンフォニック…等の要素を内包した、ただ単に冗長気味なムーディーさに決して流される事の無い各楽曲とも剛と柔や押しと引き、メリハリをつけて決して聴く者に飽きを感じさせない、都会的に洗練されたセンスとヨーロピアンな美意識とが互いにせめぎ合いつつ、テクニカルな巧みさの中にアーティスティックな感性が光っていて、徹頭徹尾プロフェッショナルな意識とプライドが随所で垣間見える、文字通り長年の勘と経験が雄弁に物語っている大ベテランらしい粋が存分に堪能出来る秀逸で神々しい一枚と言えるだろう。
共産圏時代の紆余曲折と、ロックそのものが拒絶された困難な時代を生き抜いたからこそのリアリティな説得力がやけに胸を打つ…。
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2.PÕHJA KONN/Hetk.Inspereeritud Tüürist
(from ESTONIA)


1.Avamäng 2020/2.Üksi Olemise Hurmav Oõv/
3.Igavik/4.Väike Eestimaine Laul/5.Taandujad/
6.Isamaa/7.Pillimees on Alati Tragi/8.Päikesevene/
9.Antidolorosum/10.Hetk/11.Uus ja Vana
バルト三国きってのロック大国エストニアから、3年前のセンセーショナルなデヴュー作で一躍全世界中のプログレッシヴ・ファンの度肝を抜かし、瞬く間に脚光を浴びる事となった21世紀エストニアン・シンフォニック期待の新鋭ポージャ・コーン。
3年ぶりに満を持してのリリースとなった2ndの本作品は、あたかも故手塚治虫氏の漫画ないし、見た目スパイダーマンの敵キャラをも連想させるトカゲ男が何やらドラッグを摂取しラリっているといった体で、ややもすれば意味深且つ不謹慎でケシカラン意匠に包まれながらも、肝心要の内容たるやあの秀逸なるデヴューから更なる格段のスケールアップと強化が図られ、前デヴュー作と同様イエス始めジェネシス、GG影響下を強く感じさせながらも、本作品と同時期にリイシューされた同国のレジェンド級イン・スペの唯一作に呼応するかの様に、新曲にプラスする形でイン・スペの未収録曲のカヴァーが収録され、更にはバンドとオーケストラ、チェロトリオ、男女混声コーラス隊との共演で、文字通りロック、クラシック、チェンバーといった音楽的素養が渾然一体となった圧巻ともいえる壮大なる意欲作に仕上がっている。
3年という年数と月日はバンドをここまで成長させるのかと改めて溜飲の下がる思いであると共に、イン・スペからポージャ・コーンへと…時代と世紀を越えたプログレッシヴ・スピリッツの橋渡しが受け継がれた趣すら禁じ得ない。
Facebook Põhja Konn
3.I MODIUM/L'anno Del Contatto
(from ITALY)


1.L'anno Del Contatto/2.Sorona Dove Sei/
3.Un Attimo Di Infinito/4.La Fabbrica Del Silenzio/
5.Per Favore Musica(PFM)/6.L'altra/7.Piccoli Galli/
8.L'anello Del Bufalo/9.Rifletto
21世紀イタリアン・ロックシーンより、またしても聴く者の心を揺り動かすであろう素晴らしき期待の新鋭が登場した。
ヴォーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラムによる基本的な5人編成によるセルフリリースで本デヴューを飾る事となったイ・モディウムは、紛れも無くPFM(特に5曲目を御注目)始めバンコ、オルメ、果てはアレアからの影響を物語っており、正真正銘あの70年代イタリアン黄金期の伝統と王道を内包したヴィンテージサウンドやイディオムを脈々と継承し、21世紀イタリアンでありながらもどこかしこ古き良きあの70年代イタリアンな懐かしさをも垣間見せてくれる実に稀有な存在と言えるだろう。
陽光の下の日向の匂いや石畳の街並み、碧き地中海の微風といったイマージュを湛えつつ、大らかで繊細ながらも牧歌的で爽快感溢れるサウンドは、俗に言う邪悪系イタリアン・ヘヴィプログレッシヴとは真逆な対に位置し、全曲から感じられる陽気で人懐っこくて職人肌にも似たアーティスティックな感性を持ったイタリア人らしい気質が要所々々で散見される素敵な贈り物に他ならない。
ジャケットの意匠的にはインパクトこそ欠けるものの、月明かりに照らされた穏やかな大海原という幻想的なイメージこそ彼等のサウンドの身上(心情)そのものと言っても過言ではあるまい。
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