Monthly Prog Notes -January-
2020年最初の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
今回は新年の門出に相応しいベテランと新進気鋭揃い踏みの強力なラインナップが出揃いました。
今やフラワーキングスのロイネ・ストルト、或いはスティーヴ・ハケットやニール・モーズと肩を並べる位のシンフォニック・ロックマイスターに成り得たと言っても過言では無いウクライナのAntony Kalugin率いる“カルファゲン”通算11枚目の最新作は、名実共に21世紀プログレッシヴの先鋒を担うであろう順風満帆の気運と上昇気流の波に乗った充実感溢れる好作品に仕上がっています。
オランダからは待ちに待った期待の新星降臨ともいえる久々のニューカマー“ジャンクション”の登場です。
2017年のデヴュー作と共に日本に初到着した昨年末リリースの2枚目は、前デヴュー作よりも格段にパワーアップした、往年のダッチプログレッシヴが持つ伝統…人懐っこくてホットな雰囲気が感じられるクラシカルで良質なポップス感に加え、ソリッドで且つエッジの効いたハードでシンフォニックな風合いは、今日の凡庸なメロディック・シンフォとは一線を画した光と煌きすら覚えます。
北欧と西欧とが隣り合ったデンマークからも期待の新星“フォール・オブ・エピスティーム”がめでたくデヴューを飾りました。
ブリティッシュ・プログレッシヴの大御所並びカナダのサーガから多大なる影響を受けたシンフォニックでキャッチーなメロディーラインは、21世紀ネオプログレッシヴでもありメロディック・シンフォニックの範疇ながらも、どこかしら懐旧の佇まいと相まって70~80年代イズムの作風をも偲ばせる、メンバー各々がバンドを結成する以前に培われた長い音楽経験を物語る燻し銀の如き渋さと魅力を纏った注目デヴュー作です。
新たな一年の幕明けを告げる、秀逸で荘厳なる楽師達の魂が響鳴し感動的な旋律を謳い奏でる夢舞台に暫し時間を忘れて身を委ねて頂けたら幸いです。
1.KARFAGEN/Birds Of Passage
(from UKRAINE)


1.Birds Of Passage (Part 1)
a)Your Grace/b)Against The Southern Sky/c)Sounds That Flow/
d)Chanticleer/e)Tears From The Eyelids Start (Part 1)
2.Birds Of Passage (Part 2)
a)Eternity's Sun Rise/b)Echoing Green/
c)Showers From The Clouds Of Summer/d)Tears From The Eyelids Start (Part 2)
3.Spring (Birds Delight) ※Bonus tracks
4.Sunrise ※Bonus tracks
2019年の幕明けに2枚組超大作『Echoes From Within Dragon Island』をリリースし、多分その後は次回作の為の準備期間で膨大なる時間を費やすであろうと思っていた矢先、昨年末に突如青天の霹靂の如くにリリースされた、ウクライナ・シンフォニックの筆頭格にして21世紀プログレッシヴの牽引をも担うカルファゲン通算11作目の新譜が到着した。
余計なお世話ながらも、あまりにハイペースな半ばやっつけ仕事とでも言うのか突貫工事にも似た新作リリースに、作風のレベル低下をも懸念する向きは否めないが、そんな外野の杞憂や取り越し苦労なんてどこ吹く風の如く童話の絵本を思わせるファンタジックで美麗な意匠も然る事ながら、過去の作品と同等(同等以上)クオリティーの高さは今作も不変であり、ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローとウィリアム・ブレイクの詩をコンセプトに、Antonyのキーボードワーク始め、女性Vo、ギター、アコギ、リズム隊、ヴァイオリン、フルートやバスーンの管楽器パートに至るまで、ウクライナという異国の香りを湛えつつもインターナショナルに視野を向けたメロディーラインとリリシズムが絶妙な音空間を醸し出しており、かつてのトレースの『鳥人王国』にも匹敵するシンフォニーを構築している。
Antony=カルファゲンが織り成す音の夢幻世界が、願わくばこのまま未来永劫果てしなく続いていってほしいと私を含めた世界中のファン誰しもが希望する限り、彼等の旅路が終わる事だけは決してあってほしくは無いものだ…。
Facebook Karfagen
2.JUNXION/Stories Of The Revolution
(from HOLLAND)


1.Polyalphabetical Substitution Cipher/2.Epiphany/
3.Compulsion To Psychogenesis/4.Breaking Waves(Bonus track)
突如オランダのシーンより彗星の如く登場し、一躍次世代のダッチシンフォニックを担うであろう期待の新星として昨今注目を集めているジャンクションの、本作品は昨年リリースされたばかりの2作目に当たる新譜である。
2017年のデヴュー作『Inevitable Red』と共に最近入荷され、彼等が創造する音世界並びYoutubeに於けるヴィジュアルセンスに触れられた方々も多い事だろう。
どこか斜に構えた視点とニヒリズムで人と社会に対し啓蒙と警鐘を提唱しつつ、ヘヴィでハードなソリッド感と硬派で正統なユーロシンフォニックとが共存した唯一無比なサウンドワークは、21世紀ネオプログレッシヴという範疇でありながらも、凡庸なメロディック・シンフォとは決して交わる事無くあくまで一線を画した独自の道を歩む潔さと決意表明すら垣間見えて、一筋縄ではいかない曲者感有り気な姿勢に好感を覚えてしまう。
プロフィールフォトからしてメンバー全員まだ30代前後の若手世代かと思えるが、キーボードにギター、リズム隊という基本的な4人編成で、2人の女性ヴォーカリストとチェリストをゲストに迎えたスタイルで、今風でポップがかった線描画のアートワークに一瞬戸惑うものの、意表を突いた予測不能な展開と曲作りの上手さに驚愕する事必至であろう。
彼等然り若手のプログレッシヴ系アーティストがこれからも道を繋ぎ続ける限り、オランダのシーンの前途はまだまだ眩く輝き続けるであろう。
Facebook Junxion
3.FALL OF EPISTEME/Fall Of Episteme
(from DENMARK)


1.Love Will Stay/2.Experience Oblige/
3.Accelerator/4.Punchline/5.Invisible Crusader/
6.Guiding Star
グレーカラーに彩られた終末世界観さながらの意味深なシチュエーションのアートワークが、彼等の音世界を雄弁に物語っていると言っても過言ではあるまい。
フォール・オブ・エピスティームと名乗るデンマークから登場の、久々に骨のある有望で秀逸なニューカマーが昨年デヴューリリースを飾った本作品からは、ブリティッシュ・プログレッシヴ界の大御所並びカナダのサーガといった影響下が窺えて、21世紀という時流相応のスタイリッシュで且つメロディアス&キャッチーなフィーリングの作風ながらも、メンバー各々バンド結成以前より培われた長年の音楽経験が裏打ちされているだけに、曲調の要所々々からどこかしら懐かしさにも似た70~80年代イズムの息遣いや佇まいが偲ばれて、流石に一朝一夕では為し得ない燻し銀の様な渋みと深さが堪能出来る齧り聴き厳禁な秀作に仕上がっている。
ジャーマン系やポーランドのメロディック・シンフォといったシンパシーにも相通ずる哀愁と抒情性が作品全体を色濃く染めており、物悲しさと仄かな光明が同居した筆舌し難いサウンドスカルプチュアを織り成している。
15分超の5曲目の大作含め全曲総じて素晴らしいが、やはり管弦セクションをバックに切々と謳い上げるバラード調のラストナンバーが胸を打つ。
時代や世紀がどんなに移り変わろうとも、やはり悲哀感と激情あってこそのユーロ・プログレッシヴであると改めて痛感してならない。
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