Monthly Prog Notes -March-
今月最後の「Monthly Prog Notes」をお届けします。
コロナウイルス肺炎の脅威と蔓延に翻弄され、不穏で暗澹たる時代の雰囲気に包まれ、兎にも角にも不安と恐怖に怯え苛まれた一ヶ月間だったと思えてなりません。
この度のコロナウイルス災禍で日本及び世界中で尊い生命を落とされた方々、そして亡くなられた志村けんさんの御霊に際し、この場をお借りして心より慎んで御冥福をお祈り申し上げます。
今回はコロナの猛威が吹き荒れるヨーロッパ大陸から、災禍に抗い闘うべく前途有望なニューカマー3バンドの揃い踏みとなりました。
イタリアからは、70年代イタリアン・ヘヴィプログレッシヴの伝統と熱気を脈々と継承した期待の新星がまた一つデヴューを飾る事となりました。
3年前にアンレアル・シティを抜けた女性ギタリストを中心に結成された“クエル・キ・ディセ・イル・トゥオノ”のデヴュー作は、初期フロイドばりのサイケな佇まいにムゼオとビリエットのダークさとヘヴィサウンドが融合した…もう如何にもといった感の、イタリアン・ファンの誰しもが想起するであろう、胸を掻き毟られる様なパッションとダイナミズムが存分に堪能出来る意欲作にして豪華な野心作、必聴作に仕上がってます。
久し振りのポーランドからは、21世紀ポーリッシュ・シンフォならではの、メロディック・シンフォのエモーショナルさとクールな透明感を纏いながらも、ジャズィーな側面を湛えた昨年末デヴューを飾った“セグー”が登場です。
女性キーボーダーが奏でる端整で瑞々しい感性が光るピアノをメインにギターとリズム隊が追随する、クリアでセンシティヴな旋律に時折UKばりの変拍子が垣間見える極上のシンフォニック・ジャズロックの真髄が熱い位に伝わってくる入魂作です。
かのロジャー・ディーンを意識したであろうアートワークに包まれた…言わずもがなプログレッシヴ・スピリッツ全開のフランス出身期待のニューカマー“アパイリス”のデヴューも聴き処満載。
ヴォーカリストに、ギター&ベース、ドラム&キーボードといった変則タイプのプログレッシヴ・トリオで、フレンチ・シンフォにはやや珍しいラッシュ影響下のシンフォニックからプログメタルの両方面に至るまで、世代を越えた幅広いロックエイジへ大々的に強くアピール出来る傑出の一枚と言えるでしょう。
こんな仄暗い…まだ収束の先すら見えてこない悲愴感漂う現代(いま)の御時世だからこそ、音楽の未知なる力と可能性で希望を見い出し、強く明るく逞しく前向きに乗り越えられるよう、渾身の魂で謳い奏でる生命の楽師達のハーモニーに酔いしれ、過酷な現実を忘れて暫しの間ほんの少しでも夢想し、至福なるひと時に触れて頂けたら幸いです。
1.QUEL CHE DISSE IL TUONO
/Il Velo Dei Riflessi
(from ITALY)


1.Il Paradigma Dello Specchio(Primo Specchio)
2.Figlio Dell'uomo(Secondo Specchio)
3.Chi Ti Eammina Accanto?(Terzo Specchio)
4.Il Bastone E Il Serpente(Quarto Specchio)
5.Loro Sono Me(Catarsi)
2017年リリースの『Frammenti Notturni』を最後に、結成以降苦楽を共にしてきたアンレアル・シティを(一身上の都合で)辞めた女性ギタリストFrancesca Zanettaを中心に新たに結成された、70年代イタリアン・ヘヴィプログレッシヴの王道と伝統を脈々と受け継いだ正統派クエル・キ・ディセ・イル・トゥオノ衝撃的にして渾身のデヴュー作が遂にお目見えと相成った。
単刀直入に申し上げるが…ハイクオリティーなレベルの完成度の素晴らしさも然る事ながら、以前在籍していたアンレアル・シティを遥かに凌駕し、数段上回るダークでサイケな音世界観に改めて溜飲の下がる思いですらある。
前出のアンレアル・シティではバンド自体が未成熟な印象を湛えたまま、重厚感に欠ける嫌いに加え付け焼刃みたいな(早い話薄っぺらな)ダークさに正直なかなか感情移入出来なくて、Francescaのギターが全く活かし切れてなかっただけに、彼女自らが立ち上げた活躍の場が出来た分…漸く思い描いた通りのサウンドスタイルに水を得た魚の如く活き々々としたギターワークが縦横無尽に繰り広げられている事にやはり喜びと嬉しさは隠せない。
そうかと言って決してワンマンバンドに陥る事無く、彼女を支える卓越したキーボードの活躍、ヴォーカルをも兼ねる力強いベーシスト、屋台骨的役割をも担っているドラマーに加え、フルートとバックコーラス等のゲスト参加が栄えあるデヴューに華を添えていると言っても過言ではあるまい。
「私、こういう音が創りたかったのよ」と言わんばかりなFrancescaの気迫が満ち溢れていて、言わずもがな前のバンドを辞めた事は本当に正解だった思えてならない。
彼女そしてバンドの彼等に輝かしい未来と幸あれ!心から祝福の拍手を贈ろうではないか。
Facebook Quel Che Disse Il Tuono
2.THE SEGUE/Holograms
(from POLAND)


1.Segue/2.Questions/3.Torrent/
4.Exosphere/5.Future Ways/
6.Broken Mind/7.Time Space Illusion
紅一点の女性キーボーダーを擁する、昨年末に待望のデヴューを飾ったポーランド期待のシンフォニック・ジャズロックの新星セグー。
21世紀ポーリッシュ・シンフォらしい陰影を帯びたメロディアスさとクリアな透明感、ドラマティックでエモーショナルな空気を伴ったサウンドワークながらも、かのUKをも彷彿とさせる変拍子を利かせたジャズィーでクロスオーヴァーな側面をも垣間見せるスタイリッシュさがバンドの身上と言っても異論はあるまい。
艶麗にして才媛のKarolina Wiercioch奏でる端整で且つ瑞々しい感性が発露したピアノ(+エレピ、シンセ)の美しい響きに導かれ、テクニカルなギター、強固なバッテリーを組むリズム隊という4人編成でヴォーカルレスのオールインストで構成された、徹頭徹尾ヨーロッパ大陸のイマージュと美意識を湛えた…一見クールな感で冷徹ながらもヒューマンな温もりと熱気の籠もったパッションが各曲毎に滲み出ている好作品へと打ち出している。
従来のポーランド出身らしい一本調子なメロディック・シンフォ路線に寄り掛かる事無く、あくまでただひたむきに自らの音とオリジナリティーを追い求め、純粋なまでに音楽的希求を物語っている燻し銀の様な光沢を放つ近年稀に無い傑出した珠玉のデヴュー作と言えるだろう。
Facebook The Segue
3.APAIRYS/Vers La Lumière
(from FRANCE)


1.Ritual
2.La Machine
3.Vers La Lumière
4.Sur Le Bitume
5.Recueil
もう如何にもいった感のロジャー・ディーンないしパトリック・ウッドロフをモロに意識したアートワークに思わず惹かれてしまう、フランス出身プログレッシヴ・トリオのニューカマーアパイリスの2020年デヴュー作。
ジャケットはイエス風ながらもサウンド的にはフランスではやや珍しいラッシュからの影響が窺えて、ヴォーカル、ギター&ベース、ドラム&キーボードという変則トリオスタイルのシンフォニックを構築しており、ゲディ・リーの様なハイトーンヴォイスよりもむしろ大御所アンジュのクリスチャン・デカンを思わせる典型的フレンチ・ロックスタイルの歌唱法に加え、ドラマーが弾くメロトロン、オルガン、エレピ、シンセ系も前面に出している辺り、そこは敢えて模倣を避けた差別化を図っているのかもしれない。
彼等も本家ラッシュと同様、プログレッシヴとハードロック両方面のファンへのアプローチを試みている意図が見受けられ、近年の凡庸なメロディック・シンフォやプログメタルとは完全に一線を画し自らのアイデンティティーを打ち出した意欲的で秀逸な作品と言えるだろう。
メンバー自体もヴォーカリストを除き、ギタリストとドラマーの両名だけが明確になっているので、実質上はバンドのサウンドスタイルとイニシアティヴは2人がメインになっているものと思われる。
願わくばどうかワンオフな一枚で終わらない事だけを祈りたい(苦笑)。
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