幻想神秘音楽館

プログレッシヴ&ユーロ・ロックという名の夢幻の迷宮世界へようこそ…。暫し時を忘れ現実世界から離れて幻想と抒情の響宴をお楽しみ下さい。

夢幻の楽師達 -Chapter 41-

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 今週の「夢幻の楽師達」は、70年代スカンジナビアン・ロック黎明期の雄でもあり、ノルウェーのロック史にその名を刻むまさしく伝説という称号に相応しい、今もなお絶大且つ数多くもの根強い支持を得ている“アント・マリー”に、今一度栄光のスポットライトを当ててみたいと思います。


AUNT MARY
(NORWAY 1969~)
  
  Bjørn Kristiansen:G,Vo 
  Svein Gundersen:B,Piano,Vo
  Kjetil Stensvik:Ds,Per,Vo 
  Bengt Jensen:Key

 ノルウェーの伝説的且つスカンジナヴィアン・ロック黎明期の草分け的存在でもあるアント・マリー。
 彼等の結成の経緯は21世紀の今もなお定かではないものの、後年の公式ウェブサイトから察するに1969年2月に結成されたという以外は残念な事にバンド自体のバイオグラフィーに至っては少なくも乏しい資料しかないため細部に至るところまでは不明であるが、ある程度判明している事として…結成からアルバムデヴューに至るまでの間は、度重なるメンバーチェンジを始め、極々限られた運営資金を元手に北欧並び西欧果ては中東イスラエルといった遠方にまでギグを行い紆余曲折と失意と不遇の日々を過ごしたりと、まあ…枚挙に暇が無いと言った方が正解だろう(苦笑)。
 無論バンド結成当初は所謂時代の流行に乗ったビート、サイケ、ソウル、ブルースをベースにしたポップ&ロックを演奏しており、おおよそガチガチのプログレ・シンフォ系のファンからすれば、下手すりゃそっぽも向きかねない作風ではあるが、 あの古き良き時代の独特の空気が好きな方々には好まれるサウンドではなかろうか…。
 1970年のアルバム・デヴュー前にシングル『Did You Notice?/The Ball』(デヴューアルバムにも収録されている)をリリースし、その半年後に自らのバンド名を冠した1st『Aunt Mary』で大手のポリドールからデヴューを飾る。
           
 ちなみにデヴュー当初のラインナップはJan Leonard Groth(Key,G,Vo)、Per Iver Fure(Flute,Sax,Harmonica,Vo)、Svein Gundersen(B,Vo)、Bjørn Kristiansen(G,Vo)、Kjetil Stensvik(Ds,Per,Vo)の5人編成で、前述の通り時代を象徴したサイケデリック色の強いビート・ポップス&ブルース・ロックを演っていて、好き嫌いの差はハッキリと分かれると思うが、古色蒼然としたクラシカルな響きのオルガン、独特の浮遊感が漂うフルートに、オーケストラ、ブラスセクションをバックに配したデヴュー作にして豪華な内容になっている。
    

 デヴューから程無くして彼等5人はノルウェー国内及び北欧諸国にてツアーを行うが、1年も満たないうちに音楽的な嗜好と意見の食い違いが生じ、結果的に同年秋にフルート兼サックスのPerが抜け、バンドは暫し残された4人で活動を継続しギグに明け暮れる事となる。
 その後ディープ・パープル始めジェスロ・タル…等との共演を経て大いに触発された彼等は(リッチー・ブラックモアからのサジェッションが大いに拍車をかけたみたいだ)、サウンド面でも徐々にヘヴィロック、プログレッシヴなスタイルへとシフトしていく事となり、ノルウェー国内に於いても最強のロックバンドとして称賛され『Jimi, Janis And Brian』そして『Rosalind』といったヒットシングルを立て続けに連発していくが(ちなみに『Jimi, Janis And Brian』は薬物を礼賛しているからといったくだらない理由でイギリスBBCラジオが放送禁止ソングにしてしまったそうな)、もともと敬虔なクリスチャンだったキーボーダーのJan自身、音楽と自身のライフスタイルや信念を組み合わせるのはますます困難であると悟り1972年春にバンドを去る事となる。
 余談ながらも当時この4人でスウェーデンのラジオ局の音楽番組に出演した際、この時収録されたスタジオライヴの音源が後年2009年にCDリリースされたのは既に御周知の事であろう。
          
 残された3人は新たなキーボード奏者としてBengt Jenssenを迎え再出発を計り、ポリドールからフィリップスへと移籍し度重なるリハーサルを繰り返し、曲作りに没頭し72年に2nd『Loaded』をリリースする。
 作風自体もツェッペリン、パープル、ユーライア・ヒープといった当時のブリティッシュ・ハードロックに触発された、ややプログレッシヴ寄りの硬派なハードロックへと変貌を遂げており、事実2ndの本作品はノルウェー及び北欧諸国でベストセラーを記録し、本家本元のイギリス始めドイツやオランダからも注目され始めたのは言うまでもない。
    
 現在でも北欧ロック史に残る最高傑作の一枚として、聴く人によっては第2期パープルにキース・エマーソンが加わった様なサウンドと評する向きもあるが、それは当たらずとも遠からじであろう。
 上がり調子の彼等は慢心する事なく、バンド自体も更に創作意欲を高めて大々的にモーグシンセサイザーを導入し、翌1973年遂に文字通りの最高傑作にしてプログレッシヴとハードロック両方面のファンからも圧倒的支持を得ている、ヘヴィ・シンフォニックの不朽の名作にして今もなお名盤と名高い3rd『Janus』をリリース。
          
 クリムゾンの“21st Century~”を彷彿させるイントロダクションに導かれる12分強のヘヴィ・シンフォ組曲始め、バンコやEL&P、ナイスからの影響下を思わせるような曲…等、さらに多彩(多才)な面を強く打ち出した意欲作にして野心作でもある。このまま本格的に世界進出を果たすのかと思いきや「自分達のやるべき事は全てやりつくした…!」と言わんばかり、僅か数回のギグを経て何事も無かったかの如く静かに表舞台を去りアント・マリーは僅か4年の活動を経て自らの幕を降ろした次第である。

 それ以降アント・マリー名義としての表立った動きこそ無かったものの、翌74年には2枚のベストアルバムがリリースされ、同年秋以降からは年に一度のペースでBjørn Kristiansen、Svein Gundersen、そしてKetil Stensvikによるトリオ編成でキーボード奏者不在ながらもリユニオンライヴを敢行し、1982年にはオリジナルキーボード奏者のJan Leonard Grothが再びバンドに合流してリユニオンなスタイルで年中行事の如く開催していくものの、2012年ベーシストのSvein Gundersenの引退を機にバンドは大きな変動を見せ始め、Sveinの後任に70年代同じく苦楽を共にしてきたベテランバンドHØSTからBernt Bodalが加入し、翌2013年には癌が見つかったJan Leonard Grothが闘病の為バンドを辞める事となり後任にGlenn Lyseを迎えて活動を継続し、と同時に一時的な解散から実に40数年ぶりの新作リリースに向けたリハーサルとレコーディングに着手する事となる。
 惜しむらくは翌2014年に癌との闘病の甲斐無くJan Leonard Grothが逝去し、新作録音準備のさ中にはドラマーKetil Stensvikにも癌が見つかり翌2015年4月にはKetil自身も帰らぬ人となってしまう。
 それでもBjørn Kristiansen、そしてBernt Bodalを中心に亡き友への弔い合戦の如く不幸に臆する事無く新作レコーディングは着々と進められ、ヴォーカリストのGlenn Lyse、ドラマーにOle Tom Torjussen、キーボードにOla Aanjeを迎えた5人編成の布陣で2年の歳月をかけ2016年待望の新譜『New Dawn』をリリース。
           
 現在オリジナルギタリストのBjørn Kristiansenを筆頭にBernt Bodal、Ole Tom Torjussen、Ola Aanje、そして2018年春にヴォーカリストがGlenn LyseからMorten Fredheimに交代し、昨年2019年にはアメリカとメキシコのツアーを敢行し今もなお現役バリバリの第一線で気を吐き続けている昨今である。
 こうなってくると俄然待望の初来日公演の可能性にも大いに期待したいところだが、先ず今は何よりも彼等に対する思いとして…決して諦めずに信ずれば夢と希望は必ず叶うという事であろうか。
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Zen

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